北朝鮮国内で最も厳しいコロナ関連措置が取られていた中国との国境に接する地方で、緩和の動きが起きている。
両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、国家非常防疫司令部は先月30日、恵山(ヘサン)市内のすべての単位(職場など)において、今月1日からマスク着用の義務を解除するとの指示を下した。市民は早速マスクを外して生活している。
北朝鮮は昨年8月13日、最大非常防疫体制を解除し、前方(韓国との軍事境界線に接した地域)と中国やロシアとの国境に接した地域を除いては、マスク着用の義務を解除した。これら地域の除外は、国境を通じて新型コロナウイルスが流入しかねないとの判断によるものだ。
(参考資料:マスク着けすぎ「呼吸困難で気絶」金正恩式コロナ対策の笑えない現実)
国営メディアは、今回の緩和措置について言及していないが、それら地域で撮られた写真や動画には、マスクを着用していない人々の姿が写っており、実際に緩和されたことが確認できる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、米政府系のラジオ・フリー・アジアの平安北道(ピョンアンブクト)と咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、今月1日からマスク着用義務が解除されたと伝えている。
(参考資料:「中国の空気を吸うな」北朝鮮警備隊、防毒マスク着用し厳戒)
今回の緩和に、恵山市民は非常に喜んでいる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「マスクの購入費も負担だったし、暑い日は息がつまりそうで市民の不満が非常に強かった。着用しなくてもよくなり、市民は喜んでいる」(情報筋)
ゼロコロナ政策の一環として国境警備が強化されたことで、貿易や密輸ができなくなり、恵山市民の多くは経済的な苦境にある。そのため1枚のマスクを10日以上使ったり、古着を使ってマスクを作ったりする人もいたという。そのせいで皮膚病や眼病が流行するなど、本末転倒の状態となっていた。
うっかりしてマスクを着用せずに外出しようものなら、すぐに取り締まりに遭い、罰金を搾り取られていた。そして緩和に伴い、「もしかしたら」と期待が高まりつつあるのが、貿易の再開だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面上述の通り、恵山市民の多くは貿易や密輸に携わって生計を立ててきたが、国境封鎖により、収入を失ってしまった。貿易再開へのあまりの期待感の高さからか、今までに何度も「国境が開かれる」との噂が流れ、その度にぬか喜びに終わってきた。そしてまた、「今度こそは」と期待が再び高まりつつある。
「市民はマスク着用義務が解除された今、税関を開かない理由はないのではないかと言っている。市民は貿易の再開を心の底から望んでいる」(情報筋)
コロナ前、この地域では日々のおかずから電化製品に至るまで、ありとあらゆる物が中国から持ち込まれ、それを他の地方に出荷することで、非常に潤っていた。しかし、国はそのような状況を好ましく思っておらず、コロナ鎖国をきっかけに、すべての貿易を国が貿易を司る「国家唯一貿易体制」の確立を目指している。
ただ、過去30年間に渡って続けられてきた貿易を一挙に廃して、何の支援も行わないまま地元民を飢えに追い込み、一生貧困から抜け出せなくする国のやり方を、黙って受け入れるほど北朝鮮の人々はおとなしくはない。
(参考記事:国家がどう頑張っても押し戻せない北朝鮮の「市場経済化」)