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北朝鮮の人々の大多数は、市場での商売で収入を得ている。国営企業や行政機関に勤めていても、コメ1キロも買えないほどの月給しかもらえず、配給も出ないからだ。

金正恩総書記は政権の座に就いて以来、市場に対する規制をあまり行わず、人々の生活は徐々に向上しつつあった。ところが、最近になって市場への規制を強化。ただでさえ食糧難で苦しむ人々をさらに苦境に追いやっている。首都・平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:北朝鮮国民の75%、収入のすべてを「市場での商売」で得る

最近、平壌はもちろん、郊外の平城(ピョンソン)、第2の都市の咸興(ハムン)、北東部最大都市の清津(チョンジン)など全国の都市で朝市が立つようになった。午前4時から出勤前の午前8時まで開かれるのだ。昨今の食糧難に加え、農村動員と建設動員で常設の市場が開かれる午後の時間に商売するのが難しくなった人々が、道端に野菜、果物、コメ、トウモロコシなどを持ち寄り販売する。

しかし、当局は集中取り締まりの方針を下した。その理由というのは次のようなものだ。

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「商売にも革命的制度と秩序を守らなければならないのが公民(国民)としての本分である。社会主義のイメージを乱す現象を打破しなければならない」

世界中どこでも、朝市は市民の生活の場であると同時に、観光名所でもあるのだが、北朝鮮当局にそのような発想はないようだ。朝市が都市の美観を乱し、国が認めた市場ではなく路上で商売が行われることから、市場管理税――つまりは税金を支払わないのでけしからんということだ。露天商の取り締まりと同じ理屈だ。

(参考記事:「栄養失調の子どもに粥だけでも…」すがる女性に強制労働の冷酷非情

平壌市当局は「年末までに朝市の商人を一掃せよ」との方針に基づき、大々的な取り締まりを行っている。朝市の立つ場所に、職盟(朝鮮職業総同盟)や女盟(朝鮮社会主義女性同盟)からなる糾察隊(取り締まり班)を派遣して取り締まりさせている。その数があまりにも多く「商人より取り締まり人の方が多い」と皮肉られるほどだ。

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摘発されれば、品物はすべて没収され、批判書を書かされ、罰金を支払わされる。また、取り締まりに抵抗すれば、安全部(警察署)に身柄を引き渡すとのことだ。

(参考記事:北朝鮮警察の取り締まりに激しく抵抗する「イナゴ商人」たち

しかし、始まったばかりの取り締まりが、早速ワイロをせびるネタに転落している。

取り締まり班は、商人を見つけても3万北朝鮮ウォン(約480円)またはタバコ2箱のワイロと見返りに見て見ぬふりをする。生活が苦しいのは取り締まり班とて同じ。金儲けの絶好の機会と受け止めているようだが、商人の間からは「取り締まりに来たのか金儲けに来たのかわからない」と怨嗟の声が上がっている。

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品物を売買するというごく自然に行われる行為を、無理やり取り締まろうとする北朝鮮。その目指すところは、1980年代以前のような、配給システムの復活と補助的な役割としての市場というもののようだが、それは旧共産圏諸国からの援助があってこそ成り立っていた。

頼るべき国が中国しかない今、すでに欠陥が明らかになりどこの国も採用していないシステムを復活させようとしても、結局は下からの力で骨抜きにされてしまうことだろう。

(参考記事:ワイロ要求のネタに転落した金正恩の「反社会主義」取り締まり