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北朝鮮で毎年2月16日は、「民族最大の名節」の一つである光明星節、故金正日総書記の生誕記念日だ。この日に合わせて肉、卵、油、酒などの特別配給が行われ、子どもたちには学用品やお菓子セットが配布される。

なし崩し的に市場経済化が進展し、人々の生活が豊かなになりつつあった2010年代には、「量よりも質」が重視されるようになった。2017年の光明星節には、金正恩総書記からの贈り物として配られたお菓子セットが不味かったことで、子どもたちが投げ合っていたずらをする「政治事件」が起きている。

(参考記事:金正恩氏が配ったお菓子セット、不味すぎて政治事件に発展

それが、コロナ禍で状況は一変。極端なゼロコロナを目指す北朝鮮は、2020年1月に国境を閉じて鎖国してしまったのだ。多くの物資を輸入に頼る現実を無視したこのコロナ鎖国は、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降で最悪とも言われる食糧難をもたらした。

(参考記事:金正恩「力不足」で餓死者続出…北朝鮮が迎える“重要局面”

かくして、社会は「質より量」の事態へと後戻りしてしまった。人々は、特別配給の量のあまりの貧弱さに不満をぶつけている。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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清津(チョンジン)製鋼所では、今月11日の土曜学習の後、5日間特別配給を実施する、品物は後方部経理課で受け取るようにと告知した。

かつて光明星節には、鶏1羽、卵20個、酒、油が配られていたが、今年は酒1本に卵5個だけ。受け取った労働者は失望のあまり、経理課の職員に悪態をつく始末だ。品物を受け取るために列に並んでいた労働者も、その様子を見て露骨に不満を表した。

「国家生産計画(国の定めたノルマ)に従っている工場にこれっぽちの配給しかくれないなら誰が働くだろうか」
「家族を養う大黒柱として出勤して働いているのに、これだけしかくれないとはどうやって名節(光明星節)を祝うのか」(労働者)

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すると、ある女性が「なぜそんなに不満だらけなのか。国の事情が苦しいのは知っているくせに、反動のようなことを言っている。正気か」と叱りつけ、労働者たちを黙らせた。

この女性は、朝鮮労働党の製鋼所内の委員会の委員の妻で、除隊軍人出身の党員でもあり、非常に国への忠誠心が高いようだ。女性がいなくなると、労働者たちは「党委員会の幹部連中は、ふんだんに配給をもらって、普段から銀シャリを食べているから、世間知らずなのだ」と一斉に非難したという。

清津製鋼所の労働者は、通常の配給を得られず、極めて貧しい暮らしを強いられてきた。わずか5個の卵でさえも口にすることはなく、市場に売ってコメに替えるほどだという。

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かつて、男性は勤め先から食料品や生活必需品などの配給を得て一家の暮らしを支えていたが、20年以上前に全国的な配給システムは崩壊。すべてのものを市場で買わなければ生きていけなくなり、職場に配属されていない女性が市場で商売して一家を支えるようになった。

女性たちの勤勉さが実を結び、北朝鮮は徐々に豊かになりつつあったが、国の愚策でそれも水の泡と消え、貧困と飢餓が全国を覆い尽くしている。

(参考記事:「もう生き残れる者などいない」飢えに苦しむ北朝鮮国民の肉声