金正恩「34人を大量粛清」農業不振と食糧難で

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北朝鮮の金正恩総書記は「農業第一主義」を掲げ、増産に力を入れてきたものの、コロナ鎖国による肥料などの不足と相次ぐ自然災害、労働力不足などで、2022年も散々な結果に終わった。

韓国の農村振興庁が先月14日に発表した「2022年度北朝鮮食糧作物生産量」によると、昨年の北朝鮮の農業生産量は451万トンで、一昨年の469万トンに比べて18万トン、率にして3.8%減少した。年間の需要が575万トンであることを考えると、124万トンが不足。

国内では深刻な食糧難が起きており、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の一部では、本来15日間の予定だった冬季訓練の期間を、食糧不足により5日への短縮を余儀なくされた。中には、受け取った食糧が計画量の半分にも満たなかったと、情報筋は伝えている。

朝鮮労働党機関紙・労働新聞は先月12日、「今年の農業は自然との戦争過程だったと言っても過言ではない」として、「春先から秋にかけて日照り、洪水、雹、冷害を始めとした災害性気象現象が現れ、日照率も非常に低かった」「特に8月末から9月中旬に季節外れの冷害に襲われ、農業勤労者が口をそろえて語るように、数回の台風よりも悪影響が大きかった」と報じている。

(参考記事:北朝鮮「首都市民の4割が飢餓状態」の衝撃情報

ある程度予見された結果ではあるが、その責任は幹部になすりつけられ、粛清の嵐が吹き荒れている。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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昨年末に開かれた朝鮮労働党平安南道委員会の年末総和(決算)で、軍に送る軍糧米の調達計画(ノルマ)が達成できなかったとして、郡の経営委員長3人、協同農場の管理委員長31人が解任された。

具体的にどれほど散々な結果に終わったかは不明だが、別の情報筋は昨年10月、平城(ピョンソン)市の栢松里(ペクソンリ)協同農場の収穫量は、国家計画の半分にも満たなかったと伝えている。

誰かに責任をなすりつけ、処罰をしないと事が終わらないのが北朝鮮である。これは極端な事例だが、軍需工場で起きた大量の不良品発生を、すでに故人となっている責任者になすりつけ、遺体が掘り起こし、改めて「銃殺刑」にしたということすらあった。

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解任された34人に対する処罰がどうなるかは、今のところわからないが、結果的に国の政策に反したことで、決して軽いものでは済まされないだろう。

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そんなやり方に、住民からは疑問と不満の声があがっている。

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当局は、「極端な不作は忠誠心が足りなかったから」「悪天候にもかかわらず一部の農場では成果をあげているのに、それができなかったのは、科学農業に従わなかったから」などと主張しているが、それに対して住民は「自然災害と肥料や資材が足りなかったから」だと指摘している。

「何かあれば(幹部の)クビを飛ばすのが(金正恩政権の)特徴だ」
「根本問題は解決せずに、問題のない人を処罰しているのを見るともどかしい」(情報筋)

北朝鮮農業は、非効率で農民のやる気を削ぐ集団農業に始まり、農業のズブの素人である朝鮮労働党員が指導的役割を果たす体制にある。また、処罰を恐れた農場幹部の収穫量の虚偽報告、地域の特性や天変地異などを全く考慮しない無茶なノルマ設定など、北朝鮮社会の矛盾が煮詰められたような存在。

一部で、インセンティブ制度である分組管理制が一部で導入されてはいるものの、全国的に広がっておらず、実施されている地域でもあまりうまく働いていない。現状では、来年の見通しも暗いだろう。

(参考記事:凶作続きの北朝鮮農業、打開策は「ホラ防止法」