「戦争になったら、どうせ死ぬ」ミサイル発射に冷淡な北朝鮮国民

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北朝鮮の国営朝鮮中央通信は10日、「国の戦争抑止力と核反撃能力を検証、判定し、敵に厳重な警告を送るための朝鮮人民軍戦術核運用部隊の軍事訓練が、9月25日から10月9日まで行われた」と、一連のミサイル発射をまとめて報じた。

これは、定例の米韓合同軍事演習「ウルチ・フリーダム・シールド」を受けてのものだが、訓練に合わせて、一般国民に対して15日分の食糧を備蓄せよとの指示が下され、兵士に対しては「今すぐに戦争が起きるかもしれない」として、万全の体制を整えよとの指示が下された。

実際に北朝鮮国内の雰囲気はどうだったのか。デイリーNK取材班は、北部の両江道(リャンガンド)の住民と、平安北道(ピョンアンブクト)の軍官(将校)から、話を聞いた。

両江道の住民によると先月末、「全党、全軍、全国的に常に緊張し、動員体制で仕事と生活に臨め」との指示が下された。両江道の民防衛部は、企業所や人民班(町内会)に、15日分の食糧を備蓄し、非常招集がかかれば防空壕に退避せよと指示し、適時に検閲(検査)を行うとした。

だが、実際に食糧を備蓄したか検閲が行われることはなく、「今ではうやむやになったようで、上部からも指示がない」とこの住民は述べている。

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指示を聞いた住民からは「核戦争が起きればすぐに死ぬのに、食料備蓄がなぜ必要なのか」と鼻で笑っていたという。

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同様の指示は情勢が緊張するたびに下されていたが、コロナ鎖国による深刻な食糧不足の最中で、そんな大量の食糧をどうやって調達すればいいのかわからない、非現実的で相変わらずの指示に、住民は呆れていると、現地の反応を伝えた。

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平安北道の軍官によると、当局は全軍に対して「敵どもの軍事演習は度を越し、一触即発の情勢となっている」「軍事演習をやめるまで、わが人民軍は毎日戦争状態を維持しなければならない」と、戦時体制を備えなければならないとの教養事業(思想教育)を行った。

12月からの冬季訓練を控え、特になにもない時期で、訓練の準備を進めていたところに、先月の25日になって急に「戦争が起きるかもしれない」と戦争の雰囲気を煽り立てたが、現場の兵士のリアクションは薄いものだったという。

「戦争が起きるかもしれないから備えよ」「情勢は常に緊張している」という思想教育を、耳にタコができるほど聞かされている兵士の間では、「どうせ戦略軍さえあればどうにでもなる」と、平時と何ら変わらない雰囲気が流れていた。

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一方、ミサイル発射をまとめて報道したことについて、両江道の住民は「発射するごとに発表すれば、民心に動揺が起きるから、10月10日の朝鮮労働党創建記念日にまとめて発表したようだ」との話が流れていると伝えた。

また、「ミサイル発射で事故が起きたら、誰が責任を取るのか。国は人民の生命を担保にして危険な発射をしているのではないか」との反応を示す人もいたという。

平安北道の軍官も、兵士たちが「父母きょうだいなど多くの人民が住む土地の上で、ミサイルを撃ち、安定性と精密度に問題がないと見せつけたが、本当に恐ろしく、危険なことだ」と、ヒソヒソと話していると伝えた。

実際、ミサイルが事故を起こしたこともあり、兵士たちの心配は決して杞憂ではない。

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ミサイルや核実験には、当然のことながら多額の予算が費やされることから、非常に国民受けが悪い。発表を繰り返すと世論の悪化を招きかねないため、まとめて報じたとの見方も可能だろう。

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