北朝鮮北東部、中国とロシアの国境に程近い羅先(ラソン)。経済特区に指定され、中国企業を中心に外資の進出も相次ぎ、生活レベルは首都・平壌に次いで高いと言われていた。
そんな羅先も、著しい食糧難に襲われている。原因は、コロナ対策だ。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、かつては豊かだった羅先だが、2020年1月に国境が封鎖され、貿易が完全に止められたことで、経済状況が悪化した。さらには、国内でのコロナ感染者の発生が明らかにされた先月からは、厳しい移動規制が敷かれた。
全国の貧しい地域、中でも農村部を中心に餓死者や栄養失調で倒れる人が続出しているが、羅先とて例外ではなく、子どもを中心に、栄養失調にかかる例が相次いでいる。
(参考記事:北朝鮮「陸の孤島」で響き渡る悲鳴…犠牲になる子供たち)地域からの報告を受けた朝鮮労働党羅先市委員会(市党)は、3歳から6歳の子どもに対し、毎日パン2つを無条件で配給することを決定した。それだけでも助けになるほど、食糧難が深刻ということだろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面早速、先鋒(ソンボン)パン工場など市内の食料品工場に対し、パン生産が指示された。ただし、原料は配給されなかった。小麦粉、トウモロコシ、砂糖、油など、パン生産に必要な物資は、羅先市人民委員会(市役所)の各部署に対して「自力更生」、つまり自主調達せよとの指示が下されたのだ。
「国に請うのではなく、貿易が再開されるまでは小麦粉や代用の原料を探し出して、副業地や原料基地(機関所属の農地)を総動員して、無条件で原料を保証せよ」(市党)
また、貿易が再開されれば、配給の対象を小学生にまで拡大すると同時に、各部署、機関の自力更生の負担も増やすという決定がなされた。党委員会はパン配給を含めた市民の食糧問題について、「創意工夫せよ、結果は今年下半期に総和(総括)し、達成できなかった場合には処罰する」としているという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面言い出しっぺの上層部は何もせず、責任を下部に丸投げし、成果だけ横取りするのは、北朝鮮でよく見られる現象だ。そもそも、国からして、食糧問題の解決を地方に押し付けている。
(参考記事:キムチ用の「野菜確保」を巡り大騒ぎの北朝鮮)
指示を受けた下級幹部たちは「ひどい経済難の中で、どれほど靴をすり減らして歩き回ったところで、どうせ成果は得られない」と諦め顔だという。一方で、困窮しているのは子どもだけではなく老人も同じだと、対策を求める声も上がっている。
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