「絶対に見逃すな」北朝鮮警察が神経を尖らせる”行方不明者たち”

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北朝鮮において「行方不明」は、行方をくらまし居場所がわからないこと以上の意味を持っている。そもそも、無断で居住地を離れること自体が違法である上に、脱北した可能性があるとみなされ、政治事件として扱われてしまう。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の会寧(フェリョン)は、中国との国境に接する地域だけあって、家族の中に行方不明者、脱北者がいる人が少なくないが、そんな人々を対象にした追放措置が行われていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

現在、家族のうち2人以上が行方不明になった世帯が、追放の対象となっている。今月10日には、市内の南門洞(ナムムンドン)に住んでいた4世帯が農村へと追放された。うち1世帯は、8年前に娘2人が行方不明となり、その後は消息が完全に途絶え、連絡や送金のやり取りもないにもかかわらず、追放の対象とされてしまった。

脱北に失敗した人々に対する北朝鮮当局の過酷な扱いはつとに知られているが、試練はその家族にもふりかかるのだ。

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年が明けてから始まった行方不明者の調査が今に至るまで続いており、家族に行方不明者がいる人々は気が気でない様子だという。

最も心苦しい思いをしているのは、家族が脱北して韓国や中国に住む脱北者家族だ。いつ追放対象にされるかわからないからだ。実際、脱北者家族であることが判明した人々は4回に分けて追放されている。

今回の追放は、当局から安全部(警察署)に下された指示に基づくもので、「絶対に見逃してはならない」との命令があったという。

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今回の大々的な追放だが、当局が推し進めている反社会主義、非社会主義現象の取り締まりと関連があるものと思われる。そのメインターゲットとされているのは、送金のやり取りを行うために、中国キャリアの携帯電話で連絡を取り合う送金ブローカーとその顧客だからだ。

(参考記事:「韓国からのカネは受け取れない」ある女性を襲った恐怖体験

また、「嘆願事業」との関連も考えられる。農村や炭鉱での労働力不足が深刻化し、都市部の若者を「嘆願」の名の下に強制的に送り込むキャンペーンが繰り広げられているが、当初の目標が達成できず、その穴埋めのために、脱北者家族、行方不明者家族がスケープゴートになっていると思われる。

(参考記事:送り込まれた若者が次々に逃げ出す北朝鮮農村「嘆願」事業の現実

追放措置を逃れている人たちもいる。朝鮮労働党、安全部、保衛部(秘密警察)の幹部やその家族だ。中国との国境に接している地域だけあり、脱北者、行方不明者が非常に多く、それは幹部とて同じ。家族の死亡届を出すことで追放を逃れる手法を使っているという。