北朝鮮で毎年4月15日は太陽節である。金日成主席の生誕を祝う日だ。例年なら名節(お祝いの日)の豪華な特別配給が行われるところだが、コロナ鎖国で物資不足に陥っている今の北朝鮮には無理な話であり、1人あたり砂糖150グラム、食用油150グラム、化学調味料450g入り1袋を配るのがやっとだった。
(参考記事:「お祖父さんの真似も出来ないのか」金正恩に北朝鮮国民が幻滅)
この配給は地方でも実施されているが、一部地域では行われなかったようだ。
両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、道内では9日から太陽節の配給が行われたが、甲山(カプサン)郡など各地では実施されていない。それには次のような事情があった。
郡の担当者は10日に、砂糖、食用油、化学調味料など配給の品物を受け取りに両江道の上級機関に向かったが、品物代を要求されたのだ。おりからのコロナ鎖国で郡の金庫はすっからかん。担当者は「今はカネがないが、今後稼いで必ず返す」と頼み込んだが、両江道のイルクン(幹部)から「ツケにしたらいつ払えるのか、(払えない場合)誰に責任を問えばいいのか」と言われ、追い返されたという。結局、手ぶらで帰るしかなかった。
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首都・平壌の市民は、すっかりみすぼらしくなった配給にかなり失望しているようだが、甲山の住民の反応は冷淡だ。現地では、通常時の配給はもちろんのこと、名節の特別配給に期待する雰囲気は消え去って久しい。
1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころにも、量は減らされても配給が受け取れていた平壌とは異なり、地方では治安機関や軍需工場などに務める人々を除き、かなり前から配給が途絶えていた。食料品や生活必需品は市場で買い、野菜は自宅の畑で育てる自力更生の生活が当たり前になっている。
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(参考記事:コロナ鎖国で食糧難に苦しむ北朝鮮、旧正月の特別配給への期待消える)北朝鮮は物資の多くを中国からの輸入に頼っており、コロナ対策で国境閉鎖、貿易停止を行なった時点で、著しい物資不足に陥ることが予見されていた。当局は自力更生のスローガンを繰り返すばかりで、金正恩総書記に至っては「苦難の行軍を行うことを決心した」と言い出す始末。そんなものに巻き込まれる北朝鮮国民は、たまったものではない。
一方で、貿易の再開に向けて各地の税関には大規模な消毒施設の建設が進み、それに対応する法律も制定されている。
(参考記事:北朝鮮の首都郊外に消毒施設…貿易再開に向けた動き強まる)