今月5日から12日まで北朝鮮の首都・平壌で開催された朝鮮労働党第8回大会。続いて17日からは、国会に当たる最高人民会議の第14期第4回会議が開かれた。全国からやって来た数千人の党員、代議員が参加した。
(参考記事:「欠点と原因を深刻に総括」北朝鮮で党大会後初の最高人民会議)通常なら、参加者は大会終了後に平壌の名所見学ツアーに参加し、お土産を受け取るなど、様々なイベントが用意されているが、今年は少し事情が違うようだ。米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平壌の情報筋は、参加者がイベントにも参加できず、平壌から追い立てられるように地元に戻っていったと伝えた。その理由は、参加者や平壌市民の中に、咳、高熱など新型コロナウイルス感染が疑われる症状を見せる人々が発生したからだ。平壌見学などすべてのイベントが中止となり、すぐに帰宅させよとの指示が下されたという。
ちなみに宿舎には参加者が詰め込まれ、移動も集団でさせられるなど、ソーシャル・ディスタンシングを保てない状況だったようだ。
金正恩総書記が参加者と記念写真(1号写真)を撮るのが一般的な流れだが、写真撮影は行われたものの、金正恩氏は現場に姿を見せず、彼の姿は後から合成したものだったという。おそらく、コロナ感染を恐れたためだろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、党大会に参加したという50代の工場労働者から聞いた話を伝えた。平壌に着いた先月末から党大会が始まる今月5日まで、コロナ検査を受けて行動を制限され、大会中は作業に追われ、大会終了後は記念撮影だけして、手土産一つ持たされず、寂しく帰宅したという。
コロナ疑いの症状を見せた平壌市民はどうなったのだろうか。北朝鮮は、各地域に9ヶ所の隔離施設を設け、感染が疑われる患者を収容しているが、金正恩氏のいる平壌に施設はなく、市外の施設に収容される。しかし、地方では隔離が行われなくなりつつある。
(参考記事:3割が生きて出られない…北朝鮮コロナ隔離施設の劣悪な実態)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、会寧(フェリョン)市では今月15日から、隔離と医薬品の提供が中止となったと伝えた。隔離施設が満杯になったのか、患者を移送する余力がないのか、理由は定かでないが、今では患者は自宅療養を強いられ、午前9時半から10時、午後3時から5時の間の1日2回、地域担当の医師が検温にやってくるだけだという。
高熱が確認されると、医師は解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンを処方するが、薬は提供せず、患者は市場で購入するしかない。これを受けて、市場での医薬品の値段が上がり、80北朝鮮ウォン(約1.4円)だったアセトアミノフェンが5倍に、100北朝鮮ウォン(約1.7円)だった風邪薬が6倍に高騰した。
党大会で経済再生、生活向上に向けた方針が示されることに期待していた市民は、何も示されなかった上に、隔離措置すら停止されたことに対して「何もできないくせに医者はなぜ家庭訪問をするのか」「一歩も動けないほど縛り付けているのに、どうやって自力更生しろというのか」と批判の声を上げている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面隔離施設に収容されても、環境がひどいことには変わりない。自宅療養同様に医薬品が不足し、食事は極めて貧弱、暖房もなく、寒さと飢えに震えて、逆に体調を崩して亡くなる人が出ている。