北朝鮮にとって2020年は、経済制裁と自然災害、新型コロナウイルスの三重苦に苦しめられたひどい1年だった。年明け早々、人々はもう一つの苦しみに直面している。不足する肥料を補うための人糞を集める「堆肥戦闘」だ。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、昨年末に上部から下された指示に基づき、会寧(フェリョン)で仕事初めの4日から、各職場、人民班(町内会)で、堆肥戦闘に突入したと伝えた。
今年の堆肥戦闘は、4日から10日間集中的に行われ、1人あたりのノルマは、工場、企業所の場合は労働者1人あたり500キロ、人民班では1世帯あたり150キロの人糞を10日以内に集めて納めることが求められている。
かつては、多い場合で数トン単位のノルマが課されていたこともあったが、コロナ禍が始まる直前の昨年1月に行われた堆肥戦闘では、その量が大幅に減らされた。国内での肥料生産が進み、肥料不足が緩和したことによるものだったが、その後すぐにコロナ対策として国境が閉鎖され、化学肥料の原料が中国から輸入できなくなったことで、今年のノルマは再び増やされてしまった。
(参考記事:コロナ禍でも行われる北朝鮮恒例の「新年人糞集め」)1トンでも100キロでも大量であることに変わりない。ノルマを達成できなければ自己批判を強いられたり、運が悪ければ処罰されたりすることすらある。他人が集めた人糞を盗む者もいれば、市場では人糞を売るという珍光景が繰り広げられる。
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また、人糞を納めたことにしてもらうため、農場幹部にワイロを渡す者もいれば、人糞を納めた証明書を偽造して売る人糞ブローカーまで登場するなど、国中が人糞に振り回される。
当局も問題を認識しているようで、堆肥戦闘終了後に、道党(朝鮮労働党咸鏡北道委員会)は、実際に集めた人糞の量と、生産された堆肥の量を直接確認して、中央に確認することにした。
情報筋は「今まで形式主義、要領主義で行われていた堆肥戦闘から思い切って抜け出そうとする意志が強いように見える」とし、さらに量だけではなく質のいい人糞でなければ許さないとの姿勢を示していると伝えた。
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