国連安全保障理事会の制裁決議に基づき、すべての国連加盟国は北朝鮮労働者の新規雇用を禁じ、昨年12月22日までに送り返すことが義務付けられていた。しかし、それを守っていないのが、北朝鮮労働者の最大の受け入れ先であるロシアと中国だ。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、ロシア極東のウラジオストクで、北朝鮮当局が自国労働者の再派遣に向けた動きを見せていると伝えた。
ロシアのウラジオストクの高麗人情報筋は、知り合いの北朝鮮領事館の幹部から、北朝鮮労働者を雇ってくれる会社を探して欲しいと頼まれたと明かした。5月から派遣可能なので、建設、加工、製造、農業方面で探して欲しいとのことだった。
元々いた労働者は昨年12月22日までにほぼ全てが撤収したが、それも完全撤収ではなく、今年春になれば再び派遣される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で延期になったものだ。
ロシア企業の間で、北朝鮮労働者の人気は高い。中央アジア出身の労働者に比べて器用で能力が高いのに、人件費が安いからだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面実際、ウラジオストクでは「北朝鮮労働者」というのはウリになるらしく、内装工事を請け負う北朝鮮系の会社のホームページには、そのことが大きく書かれている。また、労働力不足が深刻なこの地域においては、よく働く北朝鮮労働者は重宝されてきた。
(参考記事:外国人労働者と大乱闘も…米国が懸念する「奴隷労働」の実態)別の高麗人は、市内の北朝鮮レストランが営業を続けていると述べた上で、5月にも新しい従業員を送り込む、現在平壌で訓練中だというレストラン管理者の話を伝えた。
情報筋は、労働者のビザについて教育研修、現場実習、観光などのビザだと明かした。観光ビザは3ヶ月、研究ビザは1年で有効期限が短いため、再取得のためのコスト削減のために、列車で行き来できるウラジオストクやハバロフスクでの雇用を望んでいるそうだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかし、情報筋は北朝鮮労働者が5月から働けるかについて疑問を示した。新型コロナウイルス対策で外貨不足に拍車がかかった北朝鮮だが、その外貨を稼ぐための派遣が、ロシアのウイルス対策により進まない可能性がある。市内のほとんどの工場や工事現場が閉鎖された上に、今月18日から5月1日まで外国人の入国が禁止されるためだ。
一方で、中国当局は、すでに滞在している北朝鮮労働者の滞在期限を延長する措置を取った。
遼寧省瀋陽で北朝鮮と関連した事業を行っているビジネスマンは、中国当局がすべての北朝鮮国籍者に対して一括で60日間の滞在許可の延長を行ったと明らかにした。これがなければ、ビザが切れてしまい不法滞在者となりかねないところだった。
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別の韓国人ビジネスマンは、ウイルス対策として移動制限を行ったことから、それを考慮したものだと説明した。北朝鮮国籍者だけを特別扱いしていると見るには無理があるとしつつも、中朝関係の特殊性を鑑みた好意的な措置とした。
丹東の情報筋は、国境封鎖が解けていないため北朝鮮の人々は帰国できないでいるとして、数万人を不法滞在者にするわけにはいかないため、封鎖措置が続けばさらに延長される可能性があると述べた。