北朝鮮全土の鉄道網と電化路線を示した最近の北朝鮮鉄道路線図を、デイリーNKが入手した。
5000キロ以上に及ぶ北朝鮮の鉄道路線のほぼ全てを収録したと思われるこの路線図を見ると、多くの路線が赤い線で表示されている。これは電化区間を示すもので、路線全体の8割を占める。一方、青い線は非電化区間だ。全体の約9割は標準軌、約1割は狭軌だが、こちらの区別は表示されていない。
高い電化率は、故金日成主席が示した「我が国は電力が豊富なので必ず電気鉄道を敷設しなければなりません」という方針に従い、1960年代から大々的な鉄道電化事業が繰り広げられた結果だ。世界最大級と言われた水豊ダムを擁し、石炭などの燃料も豊富だったので、鉄道を電化することは経済発展を目指す上で合理的と考えられたのだ。
ところが、1990年代以降の発電設備の老朽化、そして深刻な経済難により、極度の電力不足に陥る。そして高い電化率がアダになり、鉄道はマヒ状態に陥ってしまった。例えば首都・平壌から北部の恵山(ヘサン)までは、時刻表通りなら23時間ほどで到着するのに、実際には10日もかかった事例などが伝えられている。
(参考記事:東京から岡山まで10日!? 電力難が招く北の「鉄道崩壊」)鉄道路線図を提供した平壌の情報筋によると、最近の北朝鮮の鉄道運行は比較的円滑になっているという。皮肉にも、従来は大部分が輸出されていた石炭が国際社会の経済制裁で輸出できなくなったことで、国内での消費量に回されるようになり、電力の生産量が増えたことがその理由だ。
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一方で、施設の老朽化は著しい。
脱北者のキム・エリョン(仮名)氏によると、北朝鮮当局は金正恩党委員長が利用する「1号路線」に過度な投資をする一方で、一般庶民が主に利用する路線は放ったらかしにしている。その中には、日本の植民地時代に作られたレールや枕木を未だに使用している例も珍しくなく、非常に劣悪な状態にあるとのことだ。こうした施設の老朽化が、大惨事に繋がる事例もある。
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先日、韓国の調査団が北朝鮮の鉄道の状況を調査した結果、開城(ケソン)から平壌を経て新義州(シニジュ)を結ぶ区間では時速20キロから60キロしか出せず、国際列車が運行されている平壌以北の区間では時速60キロでの運行が可能な程度だったという。
また、昨年5月に行われた咸鏡北道吉州(キルチュ)郡豊渓里(プンゲリ)の核実験場爆破解体の外信記者の取材が認められたが、彼らを乗せた列車は元山(ウォンサン)から吉州までの397.2キロを11時間かけて走った。