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今年だけで2度にわたる南北首脳会談や史上初の米朝首脳会談など、朝鮮半島を巡る情勢が急変する中、北朝鮮当局は国内の締め付けを強化している。今年3月には、「非社会主義現象」(当局が考える社会主義にそぐわない行為)への取り締まりの一環として、違反者に重罰で対処する方針を示している。

(参考記事:「コメの値段を外国にバラしたら終身刑」北朝鮮が情報統制

当局が特に警戒しているのは「国内情報の海外流出、海外情報の国内流入」だ。

中朝国境付近では、中国キャリアの携帯電話を使って中国や韓国と通話する人が後を絶たないが、保衛部(秘密警察)は、統制を強化する手段としてフェイクニュースを利用している。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、保衛部は次のようなフェイクニュースを意図的に流しているという。

「国境地帯に、最新型の妨害電波装置と電波探知機を導入した」

地域住民が、韓国などに住む脱北者の家族や親戚と携帯電話で連絡を取り、南北、米朝首脳会談についての詳細な情報を得たり、北朝鮮国内の情報を国外に流したりすることを防ぐための措置で、保衛部は「意図的に嘘の情報を流すために事前に協議をした」(情報筋)もようだ。

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当局は今までも、口コミネットワークを利用して嘘の情報を流し、国内世論を誘導してきた。

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北朝鮮は、中朝国境沿いの山など人が少ないところに、ドイツ製の高性能電波探知機や妨害電波装置を設置してきた。昨年には、わずか1分で携帯電話の発信位置を突き止められるという最新型の探知機を導入したと言われている。しかし、国際社会の制裁の影響で外貨不足に陥り、装置の追加購入が困難になっている模様だ。

また、妨害電波を増強すれば、川向こうの中国吉林省長白朝鮮族自治県の通信にも影響が及び、中国当局から抗議されかねず、北朝鮮としては負担に感じているようだ。

(参考記事:北朝鮮の妨害電波で中国側の携帯通話に障害…中国側住民らが被害

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今回「装備を増強した」と意図的にフェイクニュースを流したのは、予算をかけずに、北朝鮮当局のプロパガンダ以外の情報を遮断し、国内世論を良好に保つ目論見からだ。

「中国の携帯電話を頻繁に使っていた人も、今は急ぎの時しか使おうとしない。人通りの少ないところで気をつけて通話するが、保衛員や保安員(警察官)、巡察隊に見つかれば最悪だ」

しかし、情報に敏感な一部の人はしばらくしてこの情報がフェイクであることに気づいたという。

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「当局は以前から、国民に対してこんな嘘をよくついてきたので、『新しい機器を導入したというのは嘘』という話が広がりつつある。それでもとても気をつけている」(情報筋)

北朝鮮では、誰も守れないような規制を作り、違反者からワイロを巻き上げるという行為が状態化している。保衛部は、携帯電話のユーザーを逮捕して「収容所送りにするぞ」と脅迫し、多額のワイロをむしり取ってきた。また、使用を黙認する代わりに、多額の「使用料」を払わせる手法も取ってきた。

携帯電話の通話を完全に根絶すれば、保衛部が経済的困窮に陥る。自らの首を絞めるような行為をいつまでも続けるわけがないのだ。

(参考記事:携帯電話の「定額サービス」を始めた北朝鮮の秘密警察