北朝鮮では、社会の閉鎖性せいで様々な犯罪が表ざたにならず、隠されたままになっていることが脱北者らの証言で分かっている。元教員で脱北者のキム・スンヒ氏(42歳)は、「皆が口に出さないだけで、未成年者への犯罪はとても多い」と話す。

たとえば、どのような事件が起きているのか。

2人の脱北者の証言によると、次のようなケースがあったという。伝聞によるものであり、出来事の全容が正確に語られているとは限らないが、ほかに北朝鮮の犯罪実態を考察する手立てもないため、敢えて紹介することにする。

母親が食糧調達に出た間に

【事例1】1980年代の中ごろ、江原道鉄原(チョロン)市で9歳の女児、オクリョンちゃん(仮名)の遺体が市街地の裏山の洞窟で発見された。

当時、小学3年生のオクリョンちゃんは、捜索に当たった軍部隊により、全裸の状態で発見された。衣服は同じ洞窟内で見つかった。オクリョンちゃんは軍隊勤務の父に会うため、部隊を訪れた際に事件に巻き込まれた。

家族のみならず軍部隊に大きな衝撃を与えたこの事件の犯人は、同じ部隊に勤務する兵士だった。兵士は父親に会いに来たオクリョンちゃんを裏山に連れ込み、強姦した後に殺害し、死体を遺棄した。兵士は軍事裁判にかけられ、殺人及び未成年略取の刑で公開処刑された。(証言:2000年に脱北したオク・スヨン氏=仮名)

【事例2】1990年代中ごろ、平安北道チョンジュ郡に住む少女、クンヒちゃん(仮名)が義理の父親により、長期に渡り性的虐待を受けていたことが発覚した。

当時は「苦難の行軍」と呼ばれる食糧難の時代であり、クンヒちゃんの母親は食べ物を探すため家を留守にすることが多かった。

その際、仕事が無く家にいた義理の父親により、クンヒちゃんは継続的に強姦された。被害は12歳~15歳の期間に及んだ。

その結果、クンヒちゃんは妊娠。父親は1997年に咸鏡北道清津市で公開裁判を受け、教化所に収監された。(証言:2002年に脱北したキム・キョンサン氏=仮名)

前出のキム・スンヒ氏によれば、勤務先の学校が生徒数が男子300名、女子400名規模だったが、「私が北にいた当時、女子学生が強姦される事件は毎年3、4件は必ず発生していた」と話した。

北朝鮮の国家は、こうした実態とどのように向き合っているのか。

北朝鮮の刑法には、未成年者との性行為に対する刑罰が定められている。刑法第295条「未成年性交罪」には「15歳未満の未成年との性行為は懲役5年以下の労働教化刑に処す。同類の前科のある者は5年以上、10年以下の労働教化刑に処す」と明記されている。

「罪の意識」ないままに

これについて、ソウル大学のイ・ヒョウォン教授は本紙との電話インタビューで「社会現象を反映する刑法の特性上、罰則規定がある事から、北では未成年性犯罪が頻繁に起きていると考えられる」と話した。

性教育など、性犯罪防止の為に必要な施策について、関係当局の対応が未熟であることも犯罪を助長していると思われる。

別の元教員の脱北者は「北では男性に対する性教育を行っておらず、道徳的に『悪いことだ』という意識のないまま女子生徒の胸を触るなどのわいせつ行為が頻発している」と話した。

北朝鮮での性教育は生理の周期、妊娠などについて女子生徒を対象に行われるだけで、わいせつ行為、強姦などの問題点などは教育されていないという。

ソ・ギョンウォン韓国性教育研究所所長は本紙との電話インタビューで、「家庭と学校で性教育を行わない場合、性に対する正しい価値感が形成されにくい。非正常的な性の知識を身につけると、正常な性行為を行うことができないなどの悪影響がある」と説明した。

この様に北朝鮮の未成年者が性犯罪に無防備な状況に加え、男性中心の社会構造から、被害者が罪悪感に苛まれ事件を覆い隠そうとする雰囲気もある。

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