衆人環視の中で実行された正男氏殺害は、正恩氏が恐怖政治を維持するために多用している「公開処刑」と同じであると筆者は見ている。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)一説に、正男氏殺害は5年も前から計画されていたと言われる。それなのにこれほど時間がかかったのは、国際空港のような監視カメラだらけの、世界中に開かれた場所で殺害を実行しつつ、決定的な証拠を捜査当局に渡さない高度な作戦を立案するためだったのではないか。
ともあれ、本国の最高指導者が世界に見せつけるためにやったことを、日本の出先機関が否定するというのも奇妙なものだ。そんなことをするよりも、朝鮮新報には、筆者や日本メディアにも想像の及ばない、正恩氏の心の深奥について解説してもらいたいものだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。