ことの流れを真相解明に引き寄せるためには、遺族がマレーシア当局にDNAサンプルを提供し、事件前の正男氏の身辺での出来事について語らなければならない。しかし、正男氏の妻子もまた北朝鮮国民であり、たとえ海外に暮らしていても、直接・間接的に北朝鮮政府の支配を受けている。国民の権利など歯牙にもかけず、意に沿わない政治犯は家族もろとも殺してしまう金正恩体制の性格を考えた場合、国家の意思に反する形で行動するのはきわめて難しいのだ。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)正男氏の遺族に対し、それでもDNAサンプルの提供と証言を求めるとすれば、亡命受け入れとその後の生活保障も含めた、徹底的な身辺保護が図られなければならない。