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香港で開催された数学オリンピックに参加していた北朝鮮の男子高校生が、単身で韓国領事館に駆け込んで亡命を求めた事件が起きたのは昨年7月。彼はその年の9月に無事韓国にたどり着いた。

香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポストによると、彼の脱北の裏には父親の励ましがあったという。

韓国のテレビを見て

この件に詳しい外交筋によると、脱北は綿密に計画されたものだった。

同紙によると、高校生リ・ジョンヨル君の出身地は北朝鮮の「南部」。通常このような言い方はしないが、おそらく韓国に近い黄海南道(ファンへナムド)、黄海北道(ファンヘブクト)、江原道(カンウォンド)出身と思われる。この地域では、受信状態はよくないが韓国のテレビ放送を見ることが可能だからだ。

そんな彼が外の世界に目を向けるようになったのは、2度の海外経験だ。

心配せずに韓国へ行け

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リ君は、数学オリンピックの北朝鮮代表に選ばれ、2014年に南アフリカのケープタウン、2015年にはタイのチェンマイを訪れた。2016年の香港を含めると3年連続の出場だ。極めて優秀な学生だったと見られる。

そしてある日、リ君は中学校の数学教師をしている父親に「韓国に行きたい」と伝えた。すると父親は次のように答えたという。

「心配せずに行け」

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さらに父親はリ君に200ドル(約2万3000円)を握らせた。その背景には、テレビを見て韓国の豊かな暮らしぶりを見ていたことがあったのだろう。また、子どもの将来を考えた時、北朝鮮にいるよりも韓国へ行った方が息子も才能を発揮出来ると思ったのかもしれない。

香港に着いたリ君とチームメートは、パスポートを取り上げられ、厳しい監視のもとに置かれた。

しかし、数学オリンピックが終わった翌日、すきを見て宿舎の香港科技大学を抜け出し、タクシーを捕まえ、香港国際空港に向かった。そこになら韓国人がいるだろうと思ったからだ。

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そして、韓国系の航空会社のカウンターに向かい、マネージャーに韓国に行きたいと打ち明けた。マネージャーは韓国領事館に電話したが、領事館から人が来ることはなかった。

国際条約で、外交官は他国の国民を自国の外交施設に連れて行くことができないことになっているからだ。そこで、彼は再びタクシーに乗って韓国領事館に向かった。その勇気ある行動に、彼を迎えた領事館職員も舌を巻いた。

彼は2ヶ月間、領事館で過ごした。小さな部屋でゲームをしたり、マシンでランニングをしたりして日々を過ごした。最初は口数が少なかった彼だが、領事館職員と徐々に打ち解けていった。職員は、彼に対してきめ細やかな対応を行なっていたが、心配しないように家族の話は避けていた。しかし、滞在が長期化するにつれ、彼の不安は高まっていった。

新しいパスポートを得て、韓国に向かうことができたのは、領事館に駆け込んでから2ヶ月以上経った9月末のことだった。外交筋は、核問題を巡り中国と北朝鮮の関係が悪化していたことが、彼の韓国行きにとってうまく働いたと指摘した。

家族の期待を一身に背負って韓国にやって来た彼は、さらに勉学に励むため、3月から大学に進学することになったと同紙は伝えている。