韓国の宗教団体系企業と、北朝鮮当局との合弁で設立された平和自動車。北朝鮮で乗用車の生産を行い、一時は黒字も出していたが、2012年から独自生産ができない状態となっていると、ドイツのドイチェ・ヴェレ(中国語版)が報じた。
同社は、平安北道(ピョンアンブクト)定州(チョンジュ)市生まれの文鮮明(ムン・ソンミョン)氏が創立した世界基督教統一神霊協会(統一教会、現在は世界平和統一家庭連合に改称)系の企と、北朝鮮の朝鮮連峰総会社との合弁で、対北宥和政策(太陽政策)を勧めた金大中政権時代の1998年に設立された。
平安南道(ピョンアンナムド)南浦(ナムポ)市の港口洞(ハングドン)に年産1万台が可能な工場を持ち、セダンとワンボックスカーを生産してきた。
2002年に発売されたフィパラム(口笛)は、フィアットの小型セダンをベースにしたもので、SUVのポックギ(鳩)は同じフィアットのドブロ、高級車のチュンマ(駿馬)は韓国双龍自動車のチェアマンをライセンス生産したものだ。
平和自動車の関係者は韓国CBSの取材に対し、2008年には50万ドル(約5600万円)、2009年には63万ドル(約7070万円)、2010年には79万ドル(約8700万円)の黒字を達成したと述べていた。また、2011年には利益73万ドル(約8200万円)を韓国に送金していた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ところが2012月11月、生産が止まってしまった。
中国の自動車市場の専門家のエリック・ファン・インゲン・シェナウ氏によると、生産を続けている車種もあるが、中国製の部品を輸入し組み立てるだけとなっている。それも、ほぼ完成したものにタイヤ、バッテリー、エンブレムを装着するだけだという。
そのようにして組み立てられる車の多くが、北朝鮮に隣接する中国吉林省に本社を置く、中国自動車産業の「ビッグ5」の内の一つ、第一汽車のものだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面生産が止まったのは、文鮮明氏が逝去してからわずか2ヶ月後のことだ。また、平和自動車が北朝鮮当局に無償譲渡された時期と一致する。
平和自動車のパク・サングォン社長は、韓国の朝鮮日報の取材に、「譲渡は文氏の遺言。韓鶴子(ハン・ハクチャ)夫人からも遺言どおりにするように指示を受けた」と述べている。しかし、遺言の信憑性など、譲渡を巡る経緯は明らかになっていない。
北朝鮮の自動車工業は、量的にも技術的にも初歩段階で、軍事用車両に偏っており、民生用の生産数は非常に少ない。さらに国際社会の制裁で、部品の調達も困難になっているとシェナウ氏は述べている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そんな北朝鮮の自動車市場を虎視眈々と狙っているのが。中国の各自動車メーカーだ。市場経済が拡大し、運送業を営む人が増えているため、自動車への需要が伸びつつあるあるためだ。
北朝鮮へとの国境都市・丹東の税関周辺には、数多くのディーラーや、自動車関連用品を扱う店が立ち並んでいる。丹東税関の建物にテナントとして入っているディーラーだけでも5店舗に上る。