北朝鮮が海外で経営するレストラン(以下、北レス)の女性従業員たちの年齢が低年齢化していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

10代の少女たちが

北レスのウェイトレスたちは、その独特の立ち居振る舞いと美貌から、韓国などでも関心の的になってきた。

一方、海外に長期滞在して働く関係から、亡命に走る心配の少ないエリート層出身者が選抜されてきたが、昨年には中国勤務の従業員らが集団脱北して話題となった。そんな中で観察された「低年齢化」の背景には、どのような事情があるのか。

中国の北朝鮮事情通がRFAに語ったところによると、「最近、北朝鮮から派遣される女性従業員は全員が実習生の身分であるようだ。大部分がチャン・チョルグ平壌商業大学の在学生で、見るからに幼い顔立ちをしている。まだ10代の少女らも相当数いるようだ」という。

少年少女の「怖さ」

また昨年12月にタイ・バンコクの北レスを訪れた朝鮮総連OBも、次のように話す。

「久々に北レスに行ってみたのですが、明らかに場慣れしていないスタッフがいましたね。ただ、商売に対する気合いは入っていて、値段の高い順に料理をすすめてきました(笑)」

国際社会からの制裁圧力が強まり、さらには海外駐在の北朝鮮外交官らの亡命が相次ぐ中、思想的に鍛錬されていない学生たちを外国に送り込むのは、北朝鮮当局にとってリスクが高いようにも思える。

しかし、北朝鮮当局には、それにも増して切実な事情があるようだ。前出の事情通はこう述べている。

「実習生なので、正式な賃金が必要ない。『奨学金』の名目で、支配人が少しばかりの小遣いを与えればそれで済む」

昨年来、北朝鮮の重要な外貨獲得源のひとつである北レスに対しては、とくに韓国政府が圧迫を強めている。主要な顧客層だった韓国人の団体ツアー客が利用を避けるようになり、多くの店で閑古鳥が鳴いているのが実情だ。つまり実習生の動員は、利益ねん出のための経費節減策として行われていると見てよいだろう。

筆者は、そのような「苦肉の策」が、北朝鮮当局に新たなダメージをもたらす可能性もなきにしもあらずだと考える。

いまや北朝鮮では、エリート家庭の子どもといえども、韓流ドラマなど海外文化にまったく触れていないケースは少ない。むしろ感受性が高く、幼いときからそうした情報に親しんできた少年少女たちは、世の中に対してよりハッキリした態度を取る「怖さ」もある。

北朝鮮当局が、北レスの女性従業員たちを「まだ実習生だから」と甘く見ているのならば、昨年の集団脱北にも増して大きなショックに見舞われることも、あり得なくはないのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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