無償医療制度が崩壊した北朝鮮では、産婦人科医が個人宅に出向いて行われるヤミの中絶手術が横行しているが、医大生たちが夏休みや冬休みに入ると、大学の課題そっちのけで、このバイトに勤しみ学費などを稼ぎ出すというのだ。
(参考記事:北朝鮮の医大生、学費と生活費を稼ぐため「中絶手術」のバイト)そして、子どもたちが商売に関わる事に対する周囲の見方も変わりつつある。平安北道(ピョンアンブクト)の内部情報筋によると、数年前までは商売する中高生を見かければ「親が悪いせいだ」と思う人が多かった。しかし、今では「親の面倒を見る立派な学生さん」と見る人の方が多くなった。
一銭の価値にもならない金正恩氏の「新年の辞」や、北朝鮮の建国神話である白頭山伝説などの勉強よりも、親の家計を助け、社会勉強にもなり、よほどためになるからだろう。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。