せっかく声をかけてきた他国の外交官も「そのバッジは誰だ、張成沢(チャン・ソンテク、2013年に処刑された金正恩氏の叔父)の粛清は本当か」などの答えたくもない質問を浴びせてくるだけだという。
テ氏はまた、「うつ病になる外交官やその妻が多い」と語っている。これは北朝鮮当局が外交官の亡命を恐れ、家族のうち1人を「人質」として国に残すよう強いているためだ。前述のように外交官の給料は多くないため、本国に仕送りもできず「バナナを食べても残してきた家族が気になる」とテ氏は語る。肩身の狭いことと合わせて強いストレスにさらされていることが分かる。
こうした事態を避けようと「30代の若い外交官の10人に9人は子どもを一人だけ作る」という。2人の場合は否応なく1人を残さなければならないからだ。テ氏には妻との間に2人の息子がおり、幸運にも全員揃って韓国入りしたとされているが、実は娘が北朝鮮に残っているという噂もある。
(参考記事:亡命した北朝鮮外交官、「ドラゴンボール」ファンの次男を待っていた「地獄」)それでも「特別」な存在
テ氏は在外公館には「外貨の上納ノルマ」は無いと昨年12月27日の合同記者会見の席で明かしている。