鳥インフルエンザが世界で猛威を振っている。昨年11月中旬にアイルランドで感染が確認されて以来、猛烈な勢いで欧州全体や東アジアへと拡散した。

農林水産省によると、日本では既に106万5000羽の家禽類が殺処分された。また、国際獣疫事務局によると、欧州全体でも105万羽が殺処分された。

一方の韓国では、これを大きく上回る3000万羽が殺処分された。これは韓国で飼育されている家禽類全体の15%に達し、被害総額は1兆ウォン(約970億円)を超えることが予想されるなど、史上最悪の被害となっている。

鳥インフルエンザは渡り鳥が媒介になることが多い。このため北朝鮮でも感染が広がっている。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、順川(スンチョン)市の農村で、昨年12月中旬、下痢をする鶏が続出した。市の獣医防疫所で調査を行った結果、鳥インフルエンザウイルスが検出された。

これを受けて、当局は雲谷(ウンゴク)主席牧場に対する徹底した密閉撲滅作戦に乗り出した。

この牧場は、錦繍山(クムスサン)議事堂の所属で、高級薬草を与えて飼育した鶏、鴨、雉、鳩などの家禽類を、金正恩氏一家や特権層に供給する役割を担っているからだ。最高尊厳の食卓を預かっているため、ウイルスが広がりでもすれば、牧場幹部のクビが飛ぶことは間違いないだろう。

感染拡大を受けて、内閣農業省傘下の獣医防疫局、平安南道や順川市の獣疫防疫所の職員が総動員され、牧場への出入り遮断や、消毒や検査に当っている。免疫力が下がった家禽類にワクチン接種を行っている。

市の獣医防疫所は同時に、人民班(町内会)を周り、鳥インフルエンザが人間にも感染する可能性があると説明した上で、「衛生状態を保ち、免疫力を高めるには、塩水でうがいをしたり、ニンニクの汁を飲んだりすればいい」などと指導している。

ちなみに、日本の厚生労働省の説明によると、鶏肉や鶏卵を食べた人が鳥インフルエンザウイルスに感染した事例はない。しかし、食中毒予防の観点から十分な加熱処理をすることを呼びかけている。また、塩水やニンニクにどれほどの効果があるかは定かではない。

当局はまた、市場での家禽類の販売も禁止した。ところが、市場に出回る鶏肉がむしろ増えている。鳥インフルエンザを封じ込めるため、殺処分対象となった鶏が、横流しされて出回っているのだ。中には、病死した鶏も混じっているものと思われる。

農民たちは浮かない顔だ。おそらく当局に鶏を取り上げられたのだろうが、そればかりではない。

情報筋は、鶏肉の売れ行きについて言及していないものの、1個900北朝鮮ウォン(約10.8円)だった鶏卵が、600北朝鮮ウォン(約7.2円)まで下がったことを伝えており、消費者が鶏肉、鶏卵を避けていることがわかる。

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