「キム氏が国に上納するはずだった外貨のノルマを達成できなかったため、北朝鮮に住む家族が人質として国家安全保衛部(保衛省)で取り調べを受けるなかで、拷問を受け死亡した」というのだ。これに怒ったキム氏が脱北を決意したという。
それにしても、390億円という大金を持ち逃げするのは容易ではないだろう。チュ記者は亡命の時期が6月であることに注目する。「スイスが6月2日に自国内のすべての北朝鮮の銀行の支店と口座をすべて閉鎖した。この時に資金を退避させるため、一時的にキム氏が大金を動かす機会があったのでは」という推測だ。
「秘密資金」の全容
なお、390億円の中には、在外公館の運営費と外交官の給料も含まれていたとする。「蒸発資金」の穴埋めのために急きょ、北朝鮮の「大物」の一人、故金正日総書記の異母弟であるチェコ大使の金平日(キム・ピョンイル)が北朝鮮に戻り、現金確保に走ったが「うまくいっていないようだ」としている。