クリスマス・イブである。今日から明日にかけて、家族や恋人、友人の間でたくさんのプレゼントがやり取りされるだろう。

一方、本欄でも指摘した通り、北朝鮮にはクリスマスを大っぴらに楽しむ習慣はない。一部の特権階級や金持ち家庭の若者が、海外から「密輸」された文化として密かに楽しんでいるだけだ。

パーティー狂い

そんな内容の原稿を書きながら、ふと思ったことがある。われわれは、北朝鮮の金正恩党委員長に「プレゼント」を贈るべきではないかということだ。それも飛び切り高価なものを、大量に。

正恩氏は、夜な夜な愛車のステアリングを握る「走り屋」の横顔があり、現地指導を行う際にも高級外車に乗っている。クルマ関係の「プレゼント」には間違いなく飛びつくだろう。

議員は10月、中国税関の貿易統計などをもとに、金正恩体制が発足した2012年からの4年間で北朝鮮のぜいたく品輸入額が約27億ドルに上るとの調査結果を発表した。内訳は、最も多い2014年が8億ドルで、最も少ない2015年は6億694万ドルである。

品目別では、2015年にも化粧品(966万ドル)や電子製品(3億3547万ドル)が前年に比べ減っていない一方、酒類(1611万ドル)と時計(337万ドル)は輸入額が大幅に減少しているという。

ぜいたく品の対北輸出は国連安保理の制裁決議で禁じられており、たとえばスイスは、北朝鮮への時計の輸出を全面的に遮断している。しかしもしかしたら、われわれは本来すべきことと反対のことをしているのではないだろうか。

考えても見てほしい。仮に、北朝鮮に大量の高級時計が輸出されたとして、それで韓国への軍事的脅威が増したり、日米が情勢的に不利になったりするだろうか。正恩氏が、たとえ最高級スポーツカーを100台揃えてみても、それで米韓連合軍に対抗できるわけではないのだ。

そして、正恩氏がぜいたく品に金を使うほどに、北朝鮮は貴重な外貨を失い、多かれ少なかれ、核・ミサイル開発の予算にも影響が出るだろう。

ちなみに、正恩氏の父である故・金正日総書記は、ぜいたく品を幹部たちに下賜して忠誠心を買っていたが、もっぱら恐怖政治に頼っている正恩氏が、父と同じやり方で権力を固める心配はなさそうだ。

(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

また、国家が持つ外貨は国民の福利厚生に向けられるべきであるが、正恩氏にそのような殊勝な行いはそもそも期待できない。

さらには、正恩氏は週に3、4回もの徹夜パーティーなど不摂生のために、様々な健康不安を抱えているとされる。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

そんな正恩氏に、世界の珍味や銘酒、流行のスイーツなどをたっぷりと味わってもらうのはどうか。

国連の制裁下にあって、取り引きの困難な品目でもあり、正恩氏には相場より高めの値段で買ってもらえば良い。

そうすれば、こっちは潤いあっちは貧するという、なんとも絶妙な効果を期待できるかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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