北朝鮮の政治犯は、裁判開始からわずか1時間で処刑されるとの証言が出た。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)と韓国の聯合ニュースが報じた。

わずか10分で

「北朝鮮政治犯収容所内の反人道犯罪」をテーマに、米ジョンズホプキンス大学国際大学院で開催された国際模擬裁判で、平安南道(ピョンアンナムド)北倉(プクチャン)郡の18号管理所(政治犯収容所)で管理業務を担当したことのある脱北者が証言を行なった。

「政治犯が法廷に引きずり出され、処刑されるまで、どれほどの時間がかかるか」という質問に対し、この脱北者は「1時間もあれば充分だ」と答えた。また、死刑判決が下されて、処刑されるまでわずか10分しかかけないとも証言した。

公開処刑を含む北朝鮮の死刑執行は、それが人道に反して行われていることは広く認識されているが、その詳細な情報は、なおも広く知られているとは言えない状況にある。そういった意味で、このような証言が公開の場で行われるのは貴重な機会と言える。

2家族11人が

この脱北者はさらに、「処刑の最終決定は誰が行なったか」という質問に対し、「金正日氏」であると答えた。

彼の認識では、18号管理所には12万人が収容されていたが、「(すべての収監者を)殺すわけにもいかないので、石炭を掘らせるために生かしている」との話を上官から聞いたという。

また、この脱北者は、実際にあった銃殺の様子についても述べている。

労働党中央の組織指導部のシン・チャンホ2課長と、高麗奉仕指導局のパク・トゥナム局長は、平壌市内の高麗ホテルで、金正日氏を批判していたことが発覚し、管理所の有期刑エリアである革命化区域に送られた。

2人は金正日氏に、ぬれぎぬだと訴える手紙を送った。ところが、これが金正日氏の怒りを買った。「私のそばに必要のない者ども」との理由で、2人はもちろん、シン課長の11歳の息子、パク局長の30歳の息子夫婦など、2家族の11人が銃殺されたという。

この日の模擬裁判は、SAIS、国際弁護士協会(IBA)、戦略国際問題研究所(CSIS)などの政策シンクタンク、北朝鮮人権委員会、北朝鮮自由連合など北朝鮮人権問題に取り組むNGOなどの共催で行われた。

今後、このような証言の掘り起こしと共有、そしてその犯罪性に対する法的側面からの検討は、ますます進んでいくだろう。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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