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朝鮮人民軍(北朝鮮軍)と農民達が熾烈な「コメ争い」を繰り広げているとデイリーNKの現地情報筋が伝えてきた。軍当局は、穀倉地帯の黄海北道(ファンヘブクト)の協同農場からコメを大量に徴発しようとし、それに反発した農民はコメを盗んで抵抗しているという。

情報筋によると、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の平壌防衛司令部(91訓練所)の兵士が道内の黄州(ファンジュ)郡の各協同農場に、大勢押しかけて軍向けの「軍糧米」、平壌向けの「首都米」と称しながらコメを差し押さえた。一粒たりとも盗まれないように、田んぼから脱穀場に至るまで、24時間警備しているという。

北朝鮮当局は、穀倉地帯で収穫されたコメを平壌市民に配給するために、周辺地域の農場から徴発する。安定的にコメを配給することで、体制への忠誠心を高めるのが狙いだが、これに対して農民は怒りを露わにしている。

「毎年、我慢に我慢を重ねてコメ作りをしているが、結局政府機関や軍が全部奪っていくからヤル気もでない。来年からは絶対にコメ作りなんてしない」(情報筋)

こうした収奪に対して、田んぼからコメを盗み出すことで抵抗する農民もいる。

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「収穫の季節になれば、さっさと稲刈りをしてコメを盗むことが当たり前になった。都会の人はコメがなければ市場で買えばいい。でも農民はコメを奪われると生きていけない」(情報筋)

元々、協同農場のコメは農民のものではなく国家のものという扱いだ。勝手に稲刈りをしてコメを盗む行為は厳罰に処される。しかし、国と軍によるコメの収奪に対して当局側の人々でさえ「コメを盗んでおけ」と煽るほどだという。

「協同農場の班長も、自分たちが一年かけて育てたコメが奪われる状況を見て『コメがあるうちに盗め』『盗まないやつはバカだ』などと言う。保安員(警察)や保衛員(秘密警察)も、表では『穀物の窃盗は重罪』などと言っているが、裏では『田畑にコメがあるうちにさっさと持っていけ』と言っている」 (別の情報筋)

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村ぐるみでコメの窃盗に乗り出しているのは、大飢饉の記憶が生々しいからだろう。黄海南道(ファンヘナムド)の延安(ヨナン)、白川(ペチョン)、青丹(チョンダン)を中心とした地域では2012年、極端な食料不足で大量の餓死者が発生している。

その原因は、金正恩氏の「指導者デビュー」を祝う「どんちゃん騒ぎ」を数カ月にわたり続けるため、黄海南道の食糧を、権力が根こそぎ徴発してしまったからだ。