また、監視だけでなく「韓国にいる家族に『許してやるから、戻ってこい』と伝えろ」と、家族に揺さぶりをかける。その理由は、12月17日まで行われている「200日戦闘」の総和(総括)の時に、「脱北者を帰国させた」と実績を報告できれば、担当保衛員は昇進が約束されるからだ。何も成果が得られなければ、処罰される可能性もあることから彼らも必死だ。
保衛部に限らず北朝鮮の治安機関は、治安を維持する職務だけでなく、その過程で庶民からお金をかすめとり、それを上部の党組織に上納しなければならない。そのために「恐喝ビジネス」までも厭わない。
(参考記事:口に砂利を詰め顔面を串刺し…金正恩「拷問部隊」の恐喝ビジネス)脱北者がいる家族が対象とはいえ、アナログな手口まで駆使して庶民を弾圧、統制しようとするのが金正恩体制の本質なのだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。