そこで海保は、初めての軍艦構造となる大型巡視船「しきしま」の建造を急ぐとともに、Nに「特殊部隊」の創設を命じたという。海保にとって、MOX燃料輸送を成功させることは、海自に対する積年の劣等感を払拭する絶好の機会でもあったのだ。
当時の日本では、ハイジャック事件に対応する「SAT」(特殊急襲部隊)の前身部隊が警視庁や大阪府警などに置かれてはいたが、これらは機動隊に非公式に置かれた部隊であり、訓練内容からしても特殊部隊といえる代物ではなかった。
そんな中、「日本初の特殊部隊を作れ」との特命を下されたNの胸の高鳴りは、いかばかりだったろうか。
米海軍は拒絶
しかし、その興奮が焦燥に変わるのに大して時間はかからなかった。