90年代、北朝鮮政府の失政によって未曾有の食糧難が引き起こされた。当時の金正日体制でさえも「苦難の行軍」と称してこれを認めている。しかし、反省すらしなかった。それどころか食糧難を解決しようとした動きを弾圧し、さらに抗議する労働者たちを戦車でひき殺すというとんでもない虐殺行為を働いた。
(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」)人民大衆の抗議は一切許さず、仮にあったとしても徹底的に弾圧して隠蔽しながら維持されているのが、今の金正恩体制である。こうした体制が、いくら朴槿恵大統領に対する韓国民衆の抗議行動を「政権打倒に立ち上がった勇敢な南朝鮮人民」と称えたとしても、その言葉が空しく響くばかりだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。