北朝鮮で「苦難の行軍」と呼ばれる1990年代後半の大飢饉が、まさにそうだった。あの時、食糧の配給システムを維持することのできなかった当局は、仕方なく、国民に「自立」するよう促した。闇市場を最初は黙認、そして追認し、社会主義制度の下で禁じられていた「商売」を、解禁せざるを得なくなったのだ。
ビジネスの面白さを知った北朝鮮国民は、少しずつ私有財産を蓄積して消費を楽しむようになり、密輸された海外ドラマのDVDを見ながら、ファッションにも気を使い始めた。
そのように「思考の自由」を広げた国民を、金正恩体制は恐怖政治で再び抑えつけようとしている。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…)しかしその試みは、決して上手く行かないだろう。庶民は表向き、権力を畏怖するふりをしながら、心の中では笑い飛ばしているからだ。