人口2500万人の北朝鮮で、約300万台が普及していると伝えられている携帯電話。最近、その売れ行きが芳しくないという。海外ドラマなどの「違法映像」が見られないように、様々な制限がかけられているからだ。

ところが、北朝鮮の人々は様々な方法を使って、韓流ドラマを楽しんでいる。

公開処刑も

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、北朝鮮製の携帯電話やタブレットPCには、韓流ドラマなどの違法映像を認識、電話局に知らせる認識コードが入っている。

具体的にどのようなものかについて情報筋は言及していないが、次のようなものだと思われる。

北朝鮮の携帯電話はプリペイド(料金先払い)方式になっているのだが、電話局で料金を追加する際に、係員がSIMカードに保存された映像の再生記録を確認し、問題があれば当局に通報する。

もちろん、携帯電話にはSIMロックがかけられ、中国など外国の携帯電話のSIMカードが使えないようにされているものと思われる。

北朝鮮で韓流ドラマを見ていることが発覚すると、最悪の場合、公開処刑されてしまう。命を危険にさらさないために、北朝鮮の人々は規制のかかっていない、中国から密輸された中古の携帯電話やタブレット、ノートパソコンを買い求めるようになった。

そもそも、北朝鮮で携帯電話は通話目的よりも、映像を見るためのメディアプレイヤーとして使われることが多い。なので、通話ができなくてもさほど支障はないというのだ。

そのあおりで、北朝鮮製の携帯電話は売れなくなり、生産がストップしてしまったという。

慈江道(チャガンド)の情報筋によると、国産の携帯電話やタブレットPCは150ドルから200ドル(約1万6000円〜2万700円)ほどで売られているが、同じぐらいの値段で、新品同様の中国製の中古品が買えるので、後者を買う人が多い。

しかし、北朝鮮の人にとって200ドルはかなりの大金だ。ましてや収入のない大学生にとって、中国製の携帯電話に買い換えるのは至難の業。そこで、北朝鮮製の携帯電話のSIMロックを解除し、韓流ドラマを自由自在に見る「裏技」が流行しているという。

この情報筋も、具体的な解除方法は知らないとのことだが、若者や学生の間で「裏技」が使われていることは、誰でも知っていることだと述べた。

やはり、「上に政策あれば下に対策あり」なのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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