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「わが国において教育は無償だ」との宣伝を繰り返す北朝鮮。1956年には初等教育の義務化、1958年には中等教育の義務化、そして1959年3月、内閣は無料教育制度を実施を宣言した。

北朝鮮の海外向けプロパガンダサイト「わが民族同士」は、2014年に掲載した「この世で最も優れた教育制度」というタイトルの記事で、次のように自慢している。

「わが国ではすべての勤労者とその子女たちが、あらゆる教育費の負担から永遠に免れることになった」

「学習、実験、実習はもちろん、課外活動、踏査(フィールドワーク)、見学、野外活動のための費用まで、国がすべて負担する国、教科書、参考書、学用品もタダ同然の値段で供給し、生徒たちの制服も国が保証する国は、この世でわが共和国しかない」

北朝鮮当局の主張する「無料教育」は、80年代までは曲がりなりにも行われていた。ところが、90年代後半に北朝鮮を襲った未曾有の大飢饉「苦難の行軍」を境にして、状況は一変する。

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複数の脱北者の証言によると、「苦難の行軍」の頃から教育現場にワイロが蔓延し始めた。配給システムが崩壊し、食料が得られなくなったためだった。状況は、監督官庁の教育庁とて同じだった。

朝鮮労働党は各道や市、郡の教育庁に「自力更生せよ」との指示を出した。予算も給料も出せないから、自分たちで調達せよということだ。そのため、教師は生きていくために、生徒の親にワイロをせびるようになった。事実上、当局が拝金主義を煽ったのだ。そのしわ寄せは生徒や親に来た。

2008年に脱北したチェ・ジナ(仮名)さんは、当時の状況を語った。

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「生徒たちはワイロを払うために市場でリアカーを引くバイトをしていた。荷物をリアカーに載せて届けたり、自分で売る品物を運んだりしていた。高学年(高校生)の生徒の中には売春を行う者もいた。家計を助けるためだが、そのような人は進学はおろか登校すらもままならない状況だった」

「教師が人気の職種になった。普段はもちろん、入学式と卒業試験の日には、かなりのワイロが入るからだ。親にワイロを要求し、私服を肥やすのは日常茶飯事だ。一方、クラスの担任につけなかった教師は収入が非常に少なかった」

「当局はこのような状況を批判することもあったが、代案が示せるほど経済的に余裕がないため、批判しても誰も耳を傾けようとしなかった。教育現場のみならず、職場でもどこでも社会全体にワイロが蔓延しているのに」

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拝金主義は高等教育機関ほどひどかった。元教員で2008年に脱北したキム・チョルミョン(仮名)さんは語る。

「金日成総合大学に入るには、入学試験に際してワイロを準備しなければならない。入学試験に影響を与えられる地位にいる朝鮮労働党中央の教育部の幹部に5000ドルを払い、その他の関係者には500ドルずつ払わなければならない」

「毎年の新入生の定員は、地域ごとに異なっている。例えば、ある地域で優秀な学生が10人いるとして、入学定員が5人だったら、頭の善し悪しは関係なくワイロの額で入学が決まる。そのため、ワイロの相場がどんどん上がるのだ。さらに富裕層の親の間のライバル意識が相場を引き上げた」

故金日成主席は生前、教育に関してこのような教示を行っている。

「教育は国の興亡と民族の将来の運命を左右する根本問題の一つです」

鉛筆から制服に至るまで、ありとあらゆるものを市場で調達しなければならず、教師にはワイロ、当局には上納金を渡さなければ学校にも通えない。一方で幹部や富裕層は数百ドルの報酬を支払った上、入学に際しても数千ドルのワイロを支払う。金日成氏は草葉の陰でどんな思いでいるのだろうか。