北朝鮮の朝鮮民主女性同盟(女盟)中央委員会スポークスマンは15日、韓国で児童虐待が横行しているとして「腐り切り、病み切った南朝鮮の社会制度が生んだ必然的帰結である」などと述べた。

以下は、発言を報じた朝鮮中央通信からの抜粋だ。

最近の5年間、南朝鮮で12歳未満の子ども197人が殺害されたことをはじめ、小児虐待件数が総4万999件に及び、昨年にはその数が1万1715件を記録したという。 スポークスマンは、これは2011年に6058件であった小児虐待行為が朴槿恵の執権以降、2倍近く増加したということを示している(後略)。

韓国で公開されたデータの引用なので、こうした傾向があるのは事実なのだろう。

犯人を公開処刑

児童虐待の問題は、それが存在すること自体が憎悪の対象となるべきものだ。どの国で、どのような状況で起きているかということは、状況の改善に取り組む当事者にとってのみ重要なことであり、外部からとやかく論評する性質のものではない。

しかしここで敢えて、「北朝鮮はどうなのか」ということに言及するならば、北朝鮮にもやはり、児童を対象にした虐待や犯罪は存在する。

その上、体制と社会の閉鎖性のせいで、被害者による告発はおろか第三者による状況把握すらろくになされていない。ちなみに、犯人が公開処刑された事例もあるようだが、その件では被害児童が殺害されていた。

一方、上記のスポークスマンの発言でもうひとつ看過できないのは、「子供に対する母の愛が何であるのかも体験したことのない」などとして、独身である韓国の朴槿恵大統領を揶揄していることだ。

このような発言自体がナンセンスであるのは言うまでもないが、北朝鮮は1974年8月、朴氏の父である朴正煕大統領(当時)の命をねらって韓国へ刺客を送り、夫人であり朴氏の母である陸英修氏を殺害させているのだ。

これが事実であることは、2002年に北朝鮮を訪問した朴氏に対し、金正日総書記が認めている。

現在の朴氏がどのような政治指導者であっても、少なくとも金正恩体制にだけは、彼女に向って親子の愛情を云々する資格はない。そのような感覚さえ持ち合わせない独裁者の下にいる事実ほど、北朝鮮の子どもたちの未来を不安にさせるものはない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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