北朝鮮に「個室ビデオ店」が存在することが内部映像によって明らかになった。もちろん国家が経営するものではなく、民間の個室ビデオ店だ。

韓流動画で女子大生拷問

韓国の「北韓情報自由国際連帯(ISFINK)」は、「対北朝鮮メディアコンテンツ強化と革新方案を模索する国際会議」で今年5月に撮影された北朝鮮内部映像を公開。映像は、女性店主と男性客の会話や、客が「ノートテル」という動画視聴機器を使用する様子をとらえている。

ノートテルとは気軽に映像を見ることが出来る中国製の機器だが、一時期、使用禁止措置や没収措置が取られた。禁止理由は「金正恩党委員長が映っているわいせつ動画が存在する」という怪情報がかけめぐり、これを見させないためだった。

(参考情報:金正恩氏が登場する「わいせつ動画」の怪情報

今回明らかにされた映像から、ノートテルが依然として使用されているだけでなく、ビジネスとしても活用されていることが分かったわけだが、もしここから「金正恩氏わいせつ動画」が拡散したらどうなるのかが気になる。とはいえ、個室ビデオ店には、一般人だけでなく保安員(警察官)や保衛員(秘密警察)などの治安機関員も訪れるという。

本来、彼らは韓流ビデオやあらゆる動画拡散を厳しく取り締まる立場だ。4月には韓流ビデオファイルを保有していたという理由で女子大生を拷問。その一方で、自分たちは裏で楽しんでいたことになる。治安機関の腐敗ぶりがよく表れている。

スッポン工場「処刑前動画」

ISFINKによると、ある脱北者は北朝鮮で米韓のラジオ放送をはじめて聴いた時、「頭の上から足の先までスッキリするような感じを受けた」と述べた。それもそのはず。北朝鮮の公営メディアといえば年がら年中、プロパガンダ放送をばかりを流しているからだ。

それだけでなく、昨年は金正恩党委員長がスッポン工場を現地指導した際、管理不十分という理由だけで責任者を処刑し、さらに処刑直前の激怒の動画まで公開するなど、とても庶民が好んで見るようなコンテンツではない。

そうした意味で、個室ビデオ店は、単に韓流ビデオや外国映像を見たいという欲求を満たすだけでない。これまでつまらないプロパガンダ映像を半強制的に見せられてきた北朝鮮の人々の意識を「見たいものを見る」という姿勢に変化させる可能性も秘めている。これは映像に限らず、全ての情報にいえることだ。

自由な情報にアクセスできず、また情報に飢えている北朝鮮の人々に多くの情報を伝えるーーこれもひとつの人権改善支援と言えるだろう。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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