また、金正恩党委員長は、多数の犠牲者が発生しているにもかかわらず被害対策よりも核実験を優先させた。こうしたなか、人的被害が広く知れ渡れば当局に対する非難の声が高まるのは避けられない。すでに不十分な水害対策をめぐり、住民の間では反発が生じている。
(参考記事:「あんた達のせいで皆死んだ」住民見殺しで金正恩体制の権威失墜)今後も、韓国や米国のラジオ放送などを通じて、北朝鮮当局の人命軽視の姿勢、そして水害被害拡大が「人災」でであることが、北朝鮮の民衆に広まるのは時間の問題だろう。自然災害以外でも、北朝鮮では阿鼻叫喚の人災が繰り返されている。それを止めるためにも、国際社会は可能な限り内部の被害状況を知り、そして不十分な安全対策を指摘し是正させるよう動くべきだ。
(参考記事:死者数百人の事故が多発する北朝鮮の「阿鼻叫喚列車」)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。