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北朝鮮政府が「先軍時代の武陵桃源」と宣伝してきた、両江道大紅湍郡で暮らしている除隊軍人や、三池淵郡ポテ農場の除隊軍人の間で、家を出た妻を慕う歌「アリラン峠」が大流行していると、現地の消息筋が25日に伝えてきた。

除隊軍人たちはジャガイモ作業場ではもちろん、集まってお酒を飲みながら楽しむ時にもこの歌を歌っているという。一緒に踊る時にもこの歌が登場することがあるそうだ。

「アリラン峠」という歌は、2000年初頭から両江道大紅湍郡と三池淵郡のポテ農場に集団配置された除隊軍人たちの間で歌われるようになった。原曲があり歌詞を変えたものと言われているが、出典は不明だ。歌が広まって、替え歌も複数できたという。

消息筋によれば、この歌は「夢を抱いてジャガイモ農場にやって来たが、心のやりどころもなくなり立ち去った妻」を描いており、生活苦にくたびれ果てて命を絶ったある除隊軍人の悲哀を歌っている。

歌い方にも特徴があり、一人が一小節歌ったらみんなでその後の小節を歌うという。

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この土地で「アリラン峠」が流行ったのには、次のような事情があるそうだ。

北朝鮮政府は1998年から 2000年にかけて、両江道大紅湍郡を「ジャガイモ王国」にすると言い、大紅湍郡と三池淵郡にそれぞれ1千人の除隊軍人を強制配置した。

北朝鮮の住民が視聴しているテレビチャンネル「朝鮮中央テレビジョン(朝鮮中央テレビ)」が18日から23日まで、「先軍時代武陵桃源を作る大紅湍の人々」という題の、3部作の特集を放送した。

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北朝鮮政府は大紅湍郡の除隊軍人を広く紹介して、彼らと結婚する女性たちは「愛国的行為」として高く評価することができると言い、都市の娘たちが除隊軍人について農村に行き、そこで暮らすよう大々的に宣伝した。

こうした宣伝のため、当時開城にあった製紙工場の初級団体(青年同盟)の女性たちが、集団で大紅湍に行くことを志願した。更には、平壌の紡織工場で働いていた女性たちまで集まって来た。北朝鮮政府は彼女たちのために、1999年夏に数百人規模の合同結婚式を挙げるという「ショー」までした。

金正日がこの時期に大紅湍の除隊軍人の家を直接訪問して、子供に「紅湍」と名付けてあげたという有名なエピソードもある。

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だが、1日中農場で働いて、電気も来ない家でジャガイモだけを食べて暮らさなければならない除隊軍人たちの生活は、苦痛の連続だった。金正日は、外国ではジャガイモだけ食べていてもちゃんと暮らしていると言ったが、朝鮮(北朝鮮)の人は1年中ジャガイモだけで我慢するというわけにはいかなかった。

状況がさらに悪化し、除隊軍人の家に嫁いだ都市の娘たちが不平や不満を言うようになった。だが、この集団配置は金正日が指示したことだったので、むやみに去ることもできなかったという。夫たちはなかなかここを離れることができなかったため、妻たちが別れてほしいと言うようになった。

だが、離婚に応じた夫はほんのわずかだった。女性になかなか出会えない所で離婚したら、子供は誰が育てて家事は誰がしたらよいのかと戸惑ったからだった。そのため、1人、2人と逃げ出す女性が出てきた。

都市から来た女性たちがこうして逃げて行ってしまったため、今、大紅湍郡のジャガイモ農場や三池淵郡ポテ農場のジャガイモ農場には、独り身で働いている除隊軍人も少なくないそうだ。

「先軍時代武陵桃源」と騒ぎ立ててきた大紅湍郡では今も、除隊軍人たちが集まれば「アリラン峠」を歌い、金正日のジャガイモ農業革命の虚しさを語り、犠牲になった自分たちの人生を慰めている。