香港は、憲法にあたる基本法で高度自治を保証されているが、国防と外交だけは中国政府の所管と規定されている。香港中文大学の朝鮮半島研究者、鐘楽偉講師は香港TVBのインタビューで「もはや香港だけで解決できる問題ではない。中国政府と韓国政府が協議する外交問題だ」と述べた。
中国政府は、脱北者を北朝鮮に送還する措置を取っているが、それが香港にも適用されるかは未知数だ。ちなみに2005年にも、北朝鮮女性が香港の韓国領事館に駆け込み、亡命を申請している。女性は韓国への入国を果たしたが、その経緯は明らかにされていない。
学生が領事館に留まる限りは、香港政府も中央政府も手が出せないため、滞在が長期化する可能性もある。いずれにせよ、無事韓国入りができたとしても、年齢などが考慮され、詳細は公にならないだろう。しかし、いずれ「18才の亡命」を決意したその動機について、少年の口から話を聞いてみたいものだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。