ある新義州市民によると、新義州の浄水場は国境を流れる鴨緑江の中洲、威化島(ウィファド)にあるが、日本の植民地時代に作られたものをそのまま使っており、老朽化が進んでいる。さらに、建設当時は5万人だった人口も、今では35万と7倍に増えたため、水圧が保てないのだ。
せっかくの新築高層マンションだが、それを支えるだけのインフラが北朝鮮の地方都市には存在しないのだ。
北朝鮮は、建国以来、社会主義体制の優位性を誇示するため、見栄えや計画完了を追求する国家事業を行ってきたが、その内実がお粗末きわまりないことを示すエピソードと言える。なによりも、こうした事業の裏には、常に人民大衆の犠牲が伴っているのだ。
(参考記事:【再現ルポ】北朝鮮の橋崩落事故、500人死亡の阿鼻叫喚…人民を死に追いやる「鶴の一声」)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。