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たとえば日本人拉致問題だ。朝鮮総連はどうして、朝鮮学校などで拉致被害者に寄り添った人権教育をしたり、痛みを分かち合ったりする活動ができないのか。在日朝鮮人は、20世紀において朝鮮半島が日本帝国主義に蹂躙される過程で発生した。ならば、北朝鮮の国家によりいわれもなく生活を蹂躙された拉致被害者、そしてその家族の痛みを知ることで、得るものはあれど失うものなどないはずだ。

問題が起きるとすれば、朝鮮総連の上層部が、金正恩氏から「お叱り」を受ける程度のことだろう。それが怖くて杓子定規に振る舞う朝鮮総連に対しては、金正日総書記ですらいら立ちを募らせ、「偽装転向」を指示していたとも言われる。

仮に朝鮮総連が、本気で金正恩体制の役に立ちたいのだとしても、日本社会と「常識」を共有することなしには何もできまい。それができないようなら、朝鮮総連は毒にも薬にもならぬ存在として衰退していくだけだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記