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国連安保理で対北朝鮮制裁が決議されてから3ヶ月あまり。その効果は、北朝鮮のフトコロを直撃している。著しい外貨不足で、貿易代金の支払いが滞り、中国の業者から背を向けられつつあるのだ。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、貿易代金の支払いが滞りだしたのは4月中旬ごろから。品物を受け取ってから15日以内に代金を支払うのが慣例だったが、今では1ヶ月以上経っても払えないケースが続出している。

北朝鮮の貿易会社は、合法的な貿易に加えて、武器、海産物などの密輸で資金を確保し、貿易代金の決済に当てていた。しかし、中国が制裁破りや密輸を厳しく取り締まるようになり、資金繰りが苦しくなった。

外貨が払底

中朝貿易においては、北朝鮮側が中国の業者に契約条件を押し付ける「殿様商売」が行われてきた。

代金を踏み倒されても補償がなされないなど、リスクは高かったが、それでも北朝鮮との取引を続ける中国の業者は少なくなかった。それだけ儲かるということだろう。

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しかし、支払いの滞りが続発し、中国の貿易業者は従来の代金後払いから、先払いに変えるよう求めるようになった。

総理も金欠

北朝鮮の貿易会社も、代金を支払おうにも平壌の貿易銀行の外貨準備は底をつきつつあり、資金繰りが非常に困難になってしまった。貿易会社の社長たちは「銀行は役立たず。ヤミ金から借りたほうがマシだ」などとブツクサ言っているという。

困った当局は、黎明通りの建設資金を集めるために住民1世帯当たり50ドル(約5200円)の募金を支払うように指示を下した。

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最近、外貨不足の深刻さを示すエピソードが平壌市民の間に広がりつつある。

ハコモノ行政が元凶

朴奉珠(パク・ポンジュ)総理が南浦(ナムポ)港に出向き、中国から輸入した液晶テレビ1000台を受け取ろうとしたが、3万ドル(約314万円)の代金が支払えなかったため商品を受け取れず、手ぶらで平壌に戻ったというのだ。

「経済司令官の懐が空っぽだなんて」と驚く人もいれば、「それぐらいできないくせして、何が経済活性化だ」と批判する人もいるという。

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深刻な外貨不足の背景には、北朝鮮お得意の「ハコモノ行政」がある。金正恩氏は今年3月、大規模マンション団地「黎明通り」の建設を指示した。同時に貿易会社に「建設資材を確保せよ」との指示も下した。

各貿易会社は、他の商売そっちのけで中国からの鋼材の輸入に必死になっている。その量は1000トンを超えている。そこに、莫大な額の外貨が費やされたのは言うまでもない。

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その代金は、中国の業者に支払うべき別の代金を回していることが考えられる。

期日までに業者に代金を支払い、割り当てられた鋼材購入のノルマが達成できなければ、責任を問われ、北朝鮮に帰国させられてしまう。

厳しい叱責、取り調べを受けた後には、地方の閑職に追いやられる。そうなれば、海外には死ぬまで出られなくなる。貿易会社の社員たちは、中国での「自由で豊かな生活」を失うまいと必死になるあまり、違法行為に手を染めたり、商習慣に反する行為を行うのだ。

ノルマを達成し、指導者に忠誠を尽くせば地位は安泰かもしれない。しかし、国の信用はダダ下がりだ。そんなことを「愛国」「忠誠」の名のもとに行っているのだ。

大飢饉のきっかけ

もっとも、北朝鮮の「踏み倒し」は今に始まったことではない。

北朝鮮は1980年に日本を除くすべての対外債務に対してデフォルト(債務不履行)を宣言したことがあり、踏み倒した総額は120億ドルと推定されている。

それにもかかわらず、ソウル・オリンピックへの対抗心を燃やし、1989年に第13回世界青年学生祭典を開くため、当時の北朝鮮の国民総生産(GNP)に匹敵する47億ドル(当時のレートで約658億円)が投じられた。それが90年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の一因となったとも言われている。