北朝鮮北部のある都市で5月、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の徴兵を巡る不正が発覚し、物議を醸した。デイリーNKジャパンの取材協力者によれば、概要はこうだ。
徴兵対象者である8人の高校生の親たちが、兵役が免除されるよう軍の担当者にワイロを渡し、「重病のため兵役に不適」との報告書を書かせた。しかし、それを知った同級生の親たちが軍上層部に直訴。調査の結果、贈収賄が露見してしまった――。
韓国をはじめ、徴兵制を実施している国ではこういう出来事は珍しくない。しかし北朝鮮の場合、深刻さの次元が違う。
「生存本能」からの犯罪
北朝鮮は、故金正日総書記の時代から、「軍事をすべての事業に優先させる」という「先軍政治」を掲げている。ところが、軍隊の実情は惨憺たるものだ。満足な食事や居住環境が与えられないため栄養失調がまん延。生命に危機が及ぶことも珍しくない。