北朝鮮は、世界各国で外貨稼ぎのため、合法非合法問わず様々なビジネスを行っている。本来、国家のエリートである外交官たちでさえも、本国へ送る忠誠資金を稼ぐため、こうした違法ビジネスに手を染めなければならない。こうしたことにストレスを感じて、脱北を選ぶ外交官が出始めている。
(参考記事:金正恩氏の「バイアグラ資金」が盗まれている)外交官ではないが、北朝鮮レストランの美貌のウェイトレスたちは、比較的エリート家庭に育った子女たちだ。北朝鮮レストランでは、厳しいノルマ達成のために売春を強いられ、そうした状況から逃れるため、脱北するケースもある。5月には13人、6月には3人と、北朝鮮レストラン従業員の脱北が相次いでいる背景には、北朝鮮国民でさえも、金正恩体制に展望を見いだしていない背景があるといえよう。
(参考記事:中国の北朝鮮レストランで「強制売春」説が浮上)ベノス氏は、相当イデオロギー的に北朝鮮に共鳴していたようだ。ただし、北朝鮮当局にとって、ベノス氏は体制を宣伝するために利用するだけの存在だったのかもしれない。いずれにせよ、表には出てきていないが、世界には、ベノス氏のように北朝鮮に傾倒する人物が、まだまだいるのかもしれない。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。