韓国の脱北者が運営する北朝鮮向けメディア「自由北韓放送」によると、北朝鮮の金正恩党委員長が、中国国内の北朝鮮レスラン(北レス)に対して「韓国人客を出入り禁止にせよ」との指示を下したという。
同放送の瀋陽の情報筋によると、今月9日から市内の北レスが一斉に、韓国人客の出入りを禁止するようになり、従業員は、顔なじみの常連客であっても韓国人は追い返している。情報筋が従業員に訳を尋ねても「祖国からの指示」と繰り返すばかりだったという。
ある貿易関係者は、同放送に「このような指示は金正恩氏が直接下したものだ」と述べた。金正恩氏は、韓国人出入り禁止と同時に、韓国の国家情報院の関係者が出入りしていたにもかかわらず、対策を講じなかったレストラン担当の保衛指導員(秘密警察)を厳しく罰するように指示を下したとも語った。
指示の背景には、最近、相次いで発生した北レス従業員の集団脱北事件があると見られる。北朝鮮当局は、韓国政府に「国家情報院に拉致された」として、全員を帰国させることを要求している。
一方、一般の従業員に対しては「党の対外経済方針を貫徹するために努力していることを高く評価せよ」と賞賛し、心を繋ぎとめようとしていることが伺える。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面同様の措置は、瀋陽のみならず中国国内の別の北レスでも実施されているとのことだ。
丹東の別の情報筋によると、市内の松濤園食堂、金剛山食堂は中国人や外国人客は受け入れているが、韓国人客が来ると追い返している。しかし、入店の際に身分証明書をチェックするわけでもないので、韓国人であることを表に出さなければ入店は可能だ。
韓国の統一省は今年2月、対北朝鮮制裁の一環として、自国民に対して北レスの利用を自粛するよう勧告を出した。以降、北レスの客は激減し、閉店に追い込まれる店が増えている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、韓国の外交省は先月、中朝国境地域において北朝鮮による自国民への拉致、テロが行われるおそれがあるとして、個人の観光客には渡航自粛を、旅行会社にもツアーの開催自粛を呼びかけた。同地を訪れる韓国人は激減していると見られる。
上客だった韓国人を出入り禁止にする今回の指示について情報筋は「そう長くは耐えられず、そのうち曖昧になるだろう」と述べているが、再び受け入れを始めても、北レスが多く存在する中朝国境地帯を訪れる韓国人は激減した状態。経営難からの脱出はそう簡単ではなさそうだ。