朝鮮半島と中国大陸の間にある「西海(黄海)」の北方限界線(NLL)一帯は、ワタリガニの好漁場で、5月からシーズンを迎えている。

軍事的衝突が発生する恐れから、南北両政府はNLLへの接近を表向きは禁じているが、近年は、その隙を突いて多数の中国漁船が不法操業を行う。6日付の共同通信によると100隻前後の中国漁船が押し寄せ、韓国漁民も頭を悩ませている。

中国漁船を人質に

時には、巡視船に衝突するなど、荒っぽさで名をはせる中国違法漁船だが、なぜか北朝鮮海軍に対しては、恐れをなしている。理由は、北朝鮮海軍の過激な取り締まり。そのやり口は「海賊」と言われるほどだ。

北朝鮮海軍は「領海侵犯を防ぐ」という名目で中国船を襲撃し、燃料や食糧、ライター、タバコなど個人所有物まで根こそぎ強奪。さらに中国人漁民を拘束して人質にし、彼らが所属する漁業関連会社から身代金を脅し取る。時には、凄惨なリンチを加え、漁民をなぶり殺しにしてしまうケースさえある。

反面、日本海側では、ロシアの治安当局がやりたい放題の北朝鮮漁船に頭を抱えているという。

昨年10月、ロシア海域で北朝鮮漁船が違法操業を行っていたところ、ロシア国境警備隊の高速艇がやってきた。北朝鮮漁船は、ロシア側の取り締まりに、おとなしく引き下がるどころか、周囲の漁船まで加勢して、軍人を袋だたきにして返り討ちにしてしまったのだ。

朝鮮半島の東と西の海上を舞台に、海賊のように振る舞う北朝鮮海軍と不法漁船だが、2009年には、北朝鮮籍の貨物船がソマリア沖で、これまた悪名高き「ソマリア海賊」と衝突する事件が発生していた。

もっとも、この時、襲撃したのはロケットランチャーを装備したソマリア海賊だった。北朝鮮船舶は、手製の武器で応戦しながら海賊を撃退した。こうしたケースなら胸を張ってもいいだろう。

それにしても、北朝鮮の海の男たちは、良くも悪くも怖いもの知らずだ。その勇敢さを、より生産的な分野で発揮してもらいたいものだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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