人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

今年4月に改定された北朝鮮の憲法の全文が公開された。

内容の中心は、 1)指導思想に主体思想と合わせて「先軍思想」を追加 2)主権階級である勤労人民に「軍人」を追加 3)社会建設の志向に関する部分から「共産主義」を削除 4)国防委員長の権限の強化などである。

妙なニュアンスを与える項目もある。「勤労人民の人権を尊重する」という項目が第1章(政治)第8条に含まれている。「人権」という用語が明文化されたのである。

社会主義国家の憲法は、伝統的な党-国家体制における「国家」の運営に関する内容を扱っている。党が国家を「指導」しながら社会主義から共産主義に進もうというのが、伝統的な共産圏国家の社会建設目標だった。ここでいう指導機関は党である。国家機関は必ず党の指導を受けなければならない。

マルクス主義の唯物史観では、社会主義社会から共産主義社会に移行するにつれ、「国家」の地位と役割は徐々に弱まり、共産主義の高い段階に進入したら「国家」は凋落-弊絶することになっている。国家は過渡期に存在するものであり、共産主義の高い段階で「国家」が行うことは、「瀧の水のように降り注ぐ品物の管理」程度である。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

自由民主主義体制の国家と旧共産圏の「国家」という用語はこのように概念が全く異なる。そのため、6.15宣言でも「国家の統一問題」ではなく「南北双方は『国』の統一問題を….」と表記した。

また、かつての共産圏の憲法には「対外展示用」という側面もあった。社会主義-共産主義を志向すると言いながら、階級独裁-首領独裁を強化したため、ほとんどが「全体主義1人共産独裁」に向かうしかなかったし、このため首領の教示とお言葉が憲法よりも上位の権限を持つようになった。特に、北朝鮮の「党の唯一思想体系確立のための10大原則」は、北朝鮮内部では完全に憲法を超越したものとみなされている。

そのため共産主義を標榜していた国家の憲法は、対外的に「私たちにも厳然とした憲法があり、宗教や集会、結社、言論の自由など人民の基本的な権利を保護している」という点をデモンストレーション(demonstration)するための目的に転落した。高い地位についていた脱北者によれば、特に北朝鮮の憲法は、一般の住民の生活とは全く関係が無い無用の長物に過ぎないという。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

こうした脱北者たちは、北朝鮮の内部で憲法改定の草案を作る作業は1週間しかかからないと話している。金正日が指示して、側近たちと関連する専門家数人が集まって改定作業を終えて、形式的に最高人民会議の代議員会議に回すだけだという。世論を集める過程などは最初からありえない。

今回の改定憲法の核心は、「北朝鮮は先軍国家」という事実を対内外的に「はっきりと明文化」したことだ。

第3条で「共和国は….主体思想、先軍思想を…指導的な指針とみなす」と述べ、「先軍思想」を新たに追加した。更に、「共和国の主権は労働者、農民、軍人、勤労インテリを含めた勤労人民にある」と規定して「軍人」を追加した。もちろん、階級関係でも知識人(勤労インテリ)よりも上に位置している。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

また、上のような脈絡で国防委員長(金正日氏)の権限が強化された。改定憲法には「国防委員長は共和国の最高領導者」と明記されている。

元々北朝鮮では、「領導」という表現は党と首領に対して使われてきた。指導(領導)機関は党であり、唯一の指導者は首領(=首領の代理人)1人しかいない。党と首領が領導する体制をとり、朝鮮民主主義人民共和国という「国家」を代表する国防委員長も「最高指導者」と表記した。これももちろん、「国家を領導する」地位である。

これまで、金正日は国家を代表する地位として「国防委員長」というタイトルで国家間の首脳会談も行ってきた。明文化されてはいないが、金正日は党総書記、党中央委軍事委員長、国防委員長、最高司令官の資格で党、軍、政の全権を行使してきた。

しかし、今回の改定憲法で国防委員長について「共和国の最高指導者」と明記されて対外的に知られることで、朝鮮民主主義人民共和国は「先軍国家」、言い換えれば「主体思想と先軍思想を指導思想とする特殊銃隊国家」であることが対内外的に明らかになった。したがって形式的に、「我々は先軍思想を志向する先軍国家であり、共産主義を志向する社会ではない」という点をはっきりとさせたことになる。

北朝鮮はすでに60年代末から社会主義変種体制に移行し始めており、70~80年代を経て主体思想を標榜した金日成-金正日唯一支配体制が確立し、90年代以後は旧共産圏の中でも非常に異質な先軍路線を掲げてきた。社会主義-共産主義と志向するという内容を放棄したのは、長期的に見たら党の役割が有名無実化するようになった70年代半ば以降であるといえるだろう。

これについて、これまで事実上重要な地位ではなかった最高人民会議常任委員長が、「名目上国家を代普vするという問題も、改定憲法の第3条と第4条、第100条に基づいて事実上無意味なものになった。

一方、「勤労人民の人権を尊重する」という項目が第1章(政治)第8条に新たに含まれたが、この表現が「対外欺瞞用」であるのは間違いない。憲法に「言論、出版、集会、結社、宗教を許容する」という宣伝(propaganda)が書いてあるのと同じ脈絡だ。

だがこの表現を憲法に入れることで、今後金正日は国際社会に対して「私たちは勤労人民の人権を保護する」と主張して、「私たちは勤労人民のための社会主義社会であるため、『我々式の勤労人民の人権』に言いがかりをつけないように」と主張できる対外的根拠を整えたことになる。これは金正日が今後、国連や国際社会、アメリカの民主党から浮上する北朝鮮問題が、「人権問題」で本格的に批判されることを防ぐ次元で含めた文章と思われる。こうした点に、金正日の浅知慧が垣間見られる。

改定憲法を通して北朝鮮は、皮だけが残っていた共産主義社会も志向せず、より一層先軍路線、すなわち軍事優先主義路線を国家で追求するという事実を対外的に知らせた。

したがって、今後金正日政権に「核とミサイルを放棄しなさい」と要求したら、「偉大な朝鮮民主主義人民共和国の国家のアイデンティティを踏みにじる帝国主義者の蛮行」という声が聞こえるようになるだろう。

地下のマルクス-レーニンはもうずいぶん前に寝返り、今や軍事主義者スターリンも「正日よ、やめなさい。私が負けた」と言いそうである。1917年の旧ロシアボルシェビキ革命以後、歴史博物館に入っていなければならない奇妙な共産変種体制を、21世紀の大明天地に私たちは目の前で目撃している。これが朝鮮半島の北側の現実である。