中国浙江省寧波の北朝鮮レストラン「柳京食堂」の支配人と従業員13人が集団脱北した事件の衝撃が冷めやらぬ中、またもや別のレストランの従業員が脱北したことが明らかになった。

脱北美女が指名手配

23日、韓国の主要メディアは、中国の北朝鮮レストラン従業員が脱北して、第3国で韓国行きを待っていると報道。翌24日、韓国政府当局者も「脱北は事実」と認める。

韓国政府当局者や複数の報道をまとめると、脱北したのは中国陝西省西安にある北朝鮮レストランで働いていた20代の女性従業員らで、人数は2~3人。現在はタイで韓国行きを待っている模様だという。韓国政府当局者は、脱北した従業員らは、「(北朝鮮の)選ばれた階層、中産層と見られる」と説明したことから、ウェイトレスの脱北事件と見られる。

今回の事件が、4月の13人集団脱北事件直後に起きただけに、北朝鮮当局は、かなりのショックを受けているだろう。当局は、集団脱北事件以後、脱北事件の再発に警戒を強めていたはず。それにもかかわらず、起きたということは、当局の監視体制に問題があったことを露呈している。

実際、金正恩党委員長は、4月の集団脱北事件に、かなり立腹しており、保衛部に対して「南朝鮮(韓国)当局に13人の即時送還を要求し、応じない場合には1000倍の復讐を加えろ」との指示を下したといわれている。

ノルマのため強制売春も

脱北したとされる女性従業員らはまだ韓国入りしておらず、具体的な脱北理由は不明だが、4月の13人集団脱北事件に触発された可能性が高いと思われる。また、レストランの労働環境に耐えきれずに脱北を選んだことも考えられる。北朝鮮レストランの通常業務はかなりハードだが、それに加えて本国から要求される厳しい外貨獲得ノルマのため、「売春」を強いられるケースもあるという。

ウェイトレスたちの脱北の動機や背景もさることながら、今回の事件が、朝鮮労働党第7回大会直後に起こった意味は大きい。

大会を通じて、金正恩独裁体制は、より強固になり、同時に、金正恩式恐怖政治はより強まるだろう。こうした中、ウェイトレスたちが、強まる恐怖政治に怯えて、北朝鮮に見切りを付けたという見方もできる。

つまり、個別の動機以上に、恐怖政治で国民を統治しようとする北朝鮮の人権侵害が脱北事件の背景にある。さらに言うなら、美女ウェイトレスたちの脱北は、北朝鮮の人権侵害に対する告発であり、国際社会へのSOSとも言える。

今、彼女たちのSOSに、国際社会がどのように応えるのかが問われている。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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