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北朝鮮で、エリートコースを進むために欠かせないのが「朝鮮労働党への入党」だった。

配属された機関の上司へのワイロ、党や最高指導者への忠誠を尽くす(ふり)はもちろん、セクハラや性暴力にも耐えてでも、党に入ろうとするものだった。

(参考記事:セクハラ地獄の北朝鮮女性兵士…出世をエサに性関係迫る上官

しかし、最近では入党を誘われても固辞する人が出るほど、労働党の権威は失墜している。今月、朝鮮労働党第7回大会が開催されたが、興味を持たないばかりか、中身をよく知らない若者が増えているという。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、入党の誘いを断る理由は「何の役にも立たない」から。さらに、下手にエリートコースを進めば、幹部になり、幹部になって何か失敗を犯せば、粛清されかねない。

また、幹部は決してロールモデルにはなれない。若者の目に幹部は、市場に入り浸り、権力を乱用して利権を手にし、富を蓄積すること以外に何の興味もない存在にしか見えないからだ。

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1990年代末の大飢饉「苦難の行軍」を経験した20~30代、いわゆる「チャンマダン(市場)世代」の登場は、労働党の権威失墜を加速させた。かつてはさほど豊かでなくとも、無償で教育、医療、食料配給が得られ、国と指導者のおかげで暮らせていた。

ところが、苦難の行軍の頃に、それらのシステムが破壊され、市場でモノを売らなければ生きていけない状況となった。そんな時代しか知らないチャンマダン世代にとって、国も指導者もありがたいどころか、商売の邪魔をし、自由なライフスタイルに干渉するだけの「目の上のたんこぶ」に過ぎない。

特に、韓流ドラマのブームが起きてからは、労働党の権威失墜はますます進んだ。豊かでオシャレな韓国の暮らしを目の当たりにしている若い世代にとって、北朝鮮当局のやっていることは「ダサくて耐えられない」のだ。いくら当局が韓流ドラマの視聴を厳しく取り締まっても、「知ってしまった韓国の現実」を記憶から消すことはできない。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋によると、若者に「自発的に忠誠を尽くせ」などと言うと露骨に鼻で笑われるような有様だという。「党なんて要らないんじゃないの?」と言い放つ若者もいれば、党大会が何なのかよく知らない若者も多いという。

そんな彼らが、北朝鮮の社会、政治、経済、文化、軍事の主流を占めつつあり、組織と集団を嫌い、個人の利益や幸福を優先する価値観を拡散させている。そのような現実との乖離に、北朝鮮の体制はいつまで耐えられるのだろうか。