1991年、北朝鮮のある都市でソク・ギョンチョル(仮名)という28歳の青年が軍人に射殺される事件が起きた。彼こそ、地元住民が恐れ警察や軍隊でさえ一目置いたという「ソク・グループ」を率いるヤクザの親玉だった。弱冠28歳でヤクザの親玉まで上り詰めたソクとは何者か――。

ソクは高校時代から喧嘩自慢で素行が悪く、近隣の若者達から恐れられる存在だった。盗みを働いて警察に逮捕されることも数知れず。その度に、地元の有力者だった父親のおかげで罪を逃れていた。

恐怖政治で国民を押さえつける北朝鮮当局や、秩序を重んじる大人からは忌み嫌われたソク。しかし、若い不良連中からは「強い漢(おとこ)」として尊敬を集め、ソクの周りには喧嘩自慢の若者達が徐々に集まりはじめる。

「普段の生活は、国が決めた思想学習会や組織活動でがんじがらめ。大した娯楽もなく、日頃の楽しみと言えば酒やコソッと内輪でやるバクチぐらい。そんな社会でエネルギーをもてあます若いヤツらが徒党を組んで喧嘩や反社会的な行為に走るのは、当然だろう」(崔さん)

暴力性でライバルを圧倒

高校を卒業したソクは軍隊の入隊を希望するが、日頃からの「素行不良」がたたって入隊できなかった。

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