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北朝鮮は、金正恩第1書記が3月に「核実験と核弾頭装着可能な弾道ミサイルの発射実験を早いうちに断行する」と述べて以来、それに沿った動きを着々と進めている。オバマ氏が提示した条件から、遥か遠い所にいるわけだ。

オバマ氏はこれまでにも、たとえば米韓共同声明で同様の提案を行っている。しかし、そこでは北朝鮮の人権侵害追及にも言及されており、金正恩氏にとってはむしろ「死刑宣告」に等しいものだった。彼の「核の暴走」は、そうした状況から生まれているとも言える。

(参考記事:金正恩氏に「死刑宣告」した米韓首脳会談
(参考記事:北朝鮮「核の暴走」の裏に拷問・強姦・公開処刑

結論を述べるなら、人権問題に言及しないままの米朝間の「対話うんぬん」のやり取りなど、あまり意味がないのだ。金正恩氏は、国連の場で「人道に対する罪」に問われる可能性が提起されており、本当にそうなれば、ヒトラーなどと同列の虐殺者として扱われることになる。

そんな人物と、オバマ氏は握手することができるのだろうか? オバマ氏どころか、ドナルド・トランプ氏が大統領になったところで無理ではないだろうか。

(参考記事:徐々にわかってきた金正恩氏の「ヤバさ」の本質
(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記