北朝鮮の核実験と長距離弾道ミサイルの発射強行に対する国際社会の経済制裁の余波が、国内でも比較的豊かだった鉱山地帯を直撃している。

デイリーNKの内部情報筋によると、鉱山労働者を含む近隣の住民の間で、家を売り払い、引っ越そうとする住民が増えているという。一体、何がおきているのか。

鉱山労働者の給料は平均の20倍?

中朝国境に面した鉱山地帯である咸鏡北道(ハムギョンブクト)の茂山(ムサン)や両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)。ここで働く労働者は、北朝鮮国内では破格ともいえる月給をもらっていた。

北朝鮮の国営企業の一般的な月給はわずか5000ウォン(約75円)だが、茂山や恵山の鉱山運営会社で働く鉱山労働者の月給は100万北朝鮮ウォン(約1万5000円)だという。

そもそも、鉱山は安全設備が整っておらず、労災事故の危険性が高い。さらに、「流刑地」としてイメージが悪かった。こうした事情から、当局は、外貨稼ぎに役立つ産業の働き手を確保するため、高給を支払ってきた。

制裁によって鉱山が窮地に

国選安保理での経済制裁案採択後も、茂山鉱山で産出される鉄鉱石の中国への輸出は続けられ、安泰と思われていたが、今月に入って事態は急変する。

中国政府は今月5日、鉄鉱石を含む北朝鮮産の鉱物資源を輸入の禁止を発表。それ以降、一部の鉱物資源を除いて、対中輸出はストップした。

収入が途絶えた鉱山運営会社は資金難に陥り、労働者に給料が払えなくなってしまったことから、多くの住民が鉱山に見切りをつけ、家を売り払い、他地域に引っ越ししようとしているのだ。

地域経済にも悪影響

情報筋は、「鉱山が暮らしを支えていた時代は、もはや終わった。多くの鉱山労働者が、家を売ってドルや人民元などの現金を確保して、来るべき経済難、食糧難に備えようという心理が働いている」と解説する。

しかし、相場より安い1、2万人民元(約16万9000円~33万8000円)で売りに出された家は、一向に売れる気配がなく、投げ売りの様相を呈しつつあるという。

給料の遅配は、地域経済にも深刻な影響を与えている。いまだに、市場には商品が潤沢にあり、コメの値段も安定しているが、モノを買う人は激減。商人たちの間からは「これも全部核実験のせいだ」と嘆く声が聞かれるという。

社会は一見安定しているように見えるが、経済制裁による不安心理が、給料の遅配により増幅されているーーこれが、今の北朝鮮の現状だ。

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